戦争が落とす影〜マリアンヌ2019年09月10日 17:38


ハムステッドヒース

録画しておいた映画『マリアンヌ』を観ました。
第二次世界大戦のさなか、作戦をともにした工作員同士が恋に落ち、
幸せな結婚をするのですが、妻に二重スパイの容疑がかかり…という
とっても切ないストーリー。

戦争という狂気が支配する時代、この映画のように、多くの工作員が放たれ、
危険を冒して情報を探ったり、作戦を遂行したりしたのだと思います。
もちろん、二重スパイもいたでしょうし、裏切りもあったでしょうし、
映画や小説より過酷な状況もたくさんあったことでしょう。
いえ、過去だけの話ではありません。

そして、いつも思うのは、そうした過酷な使命を帯びた工作員や諜報員も、
ひとりの人間であるということです。

サラファーンの星にも、大きな戦争を背景に、諜報員が数多く登場します。
裏切りや陰謀が渦巻くなか、彼らの人間としての顔はどんなだったのか。
親しい友だちや、夫や、恋人に、そんな任務を帯びた人がいたら、
お互い、どんな思いでいるのだろうか。
そうしたことをたくさん考えました。
それぞれのキャラクターの紹介で、またそんな話をしていきたいです。

『マリアンヌ』では、幸せそうなピクニックのシーンが印象的でした。
ロンドン郊外のハムステッドヒース。
この映画のほかにも、『ノッティングヒルの恋人』や『ブライトスター』のロケ地に
なっていますし、コンスタブルの絵画でも知られています。
わたしもずいぶん前、イギリスの友人に案内してもらいましたが
(写真はそのときの一枚。スマホなんてないから、フィルムで撮影しています)
森や池が点在し、小高い丘からは遠くにロンドンの街が望める素敵なところでした。

数学で戦争を止めようとした男2019年09月14日 17:22


『アルキメデスの大戦』ムビチケ

戦争と平和は、わたしにとって、生涯のテーマです。

ものごころつく前から、始終戦争の夢を見て、本当に怖かった。

ですので、誰に言われるでもなく、戦争について深く考えるようになりました。

サラファーンの星で、戦争や国家の暴走を止めようとする者たちを描いたのも

自然ななりゆきでした。

 

『アルキメデスの大戦』は、数学で戦争を止めようとした男の物語と聞いて

ぜひ観たいと思っていた作品。

写真は、生まれて初めて使ったムビチケです。

 

時は1933年。

映画は、戦艦大和の建造に邁進する帝国海軍と、開戦を止めるべく、

その海軍に挑む若き数学者の、息詰まるような攻防を描いていきます。

戦争が起こることは、史実として知っていても、

なんとか止めようと奔走する主人公を、応援せずにはいられなくて

タイムリミットが迫るなか、手に汗握って観ていました。

 

映画の主人公は実在の人物ではありません。

けれど、当時、戦争を止めようとした人たちは数多くいたと思います。

そうした人々の、叶わなかった願い、平和への祈りもこめられた作品とも

いえるのではないでしょうか。

悲惨な戦争が起こってしまったという事実を前に、

ラストの主人公の表情は、観る者の心を激しく揺さぶります。

緊張感の中に哀しみの漂う音楽も、心に残りました。

 

わたしは数学は苦手なのですが、主人公の「数字は美しい」という言葉は、

わかるような気がします。

数式を描くところは、宇宙の神秘をあらわしているみたいで、わくわくしました。

(実在の天才数学者を描いた「ビューティフル・マインド」という映画も、

数式を描く映像が、とっても素敵なんです。)

演じる菅田将暉が、猛烈な勢いで黒板に書き殴っていくのですが、

エグゼクティブ・プロデューサーの話によると、

彼は本当に数学が得意で、全部そらで覚えたそうです。

本当にびっくり!

 

その彼と、最初は反発していた部下、柄本佑とのコンビがなんともユーモラス。

やがて悲劇が訪れることを、観る者すべてが知っているなか、

そこはひとつ、ほっとさせられるところです。こういうシーン大事ですよね!

 

戦争を知らない世代が増え、平気で戦争をしようと語る政治家が出てくる時代。

こうした作品は、いまとても大切に思えます。

双子のこと2019年09月17日 14:31

子どものとき、同じ学年に、3組の双子がいました。
女の子がふた組、男の子がひと組。
小学校と中学校の九年間、一緒だったので、どの双子とも、
少なくとも、片方とは同じクラスになりました。

みんな一卵性だったので、そっくりでしたが、
いつも一緒に遊んでいるわたしたち生徒は、
どちらがどちらかちゃんと区別がつきます。
声も、顔も、微妙に、でも、明らかに違うのです。
ところが、先生たちときたら、てんで見分けがつきません。
どうしてわからないんだかなぁって、みんなで不思議に思ったものです。

双子たちは、おもしろがってクラスを入れ替わったりしました。
(ふたりのロッテみたいですよね。)
でも、ただの一度もばれたことはありませんでした。

どの双子もきょうだい仲がよくて、話したり歌ったりすると
ハーモニーがきれいでした。
姿形はそっくりなのに、性格はそれぞれとても個性があって、
それが不思議で面白く、双子は、わたしにとって、
永遠に神秘的で、魅力的な存在となりました。

大学の卒論では、双子の女の子が主人公のファンタジーを書きました。
サラファーンの星にも、林檎園の双子(いたずらざかりの男の子)と、
葡萄亭という食堂兼宿屋の双子(子どものころは、やはり村一番の
いたずらっこだった十代後半の少年)を登場させました。
脇役で、葡萄亭の少年たちに至っては、話の中で語られるだけですが、
なぜかやっぱり双子の存在は、外せないのです。
どのキャラクターも、同級生とは、容姿も性格もまったく違うけれど
ありありと目に浮かんできて、つい書いてしまうのです。

高校に進学すると、同じ学年どころか、学校全体でも双子はいなくて、
以来、長いあいだ、まったく出会いませんでした。
そして数年前、双子の姉妹のお姉さんとお友だちになりました。
ひさしぶりの双子です。
二卵性なので、見かけは少し違いますが、とっても素敵な姉妹。
やっぱり双子と縁があったのかなと、なんだか嬉しく思っています。

『アド・アストラ』〜父を探す孤独な旅の果てに2019年09月19日 14:53

映画『アド・アストラ』より

    Ⓒ 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.


映画『アド・アストラ』の試写会に行ってきました。

舞台は近未来。主人公は、ブラッド・ピット演じる宇宙飛行士のロイ。

地球外知的生命の探索に向かって消息を絶った父を探すため、

遙かなる宇宙空間へと旅立つロイの、長く孤独な旅路を描いた壮大な物語です。

 

どんな任務も完璧にこなし、いかなる状況でも冷静で優秀なロイですが、

同じく宇宙飛行士だった父は、家庭を顧みることはなく、

母はそのために心を病み、ロイ自身も、深い孤独を抱えています。

 

彼は、伝説の宇宙飛行士である父が、実は生きており、

海王星で人類の脅威となる実験をしていると聞かされ、

その暴走を止めるという極秘の使命を帯びて、宇宙へ送り込まれるのですが、

父を探すミッションは、思わぬ危機の連続。

最後まで、何が起こるかわからない展開で、まるで自分が探索の旅に

出ているような錯覚にとらわれました。

 

冒頭の、国際宇宙ステーションから見る、息を呑むような地球。

月の基地や火星の基地も、宇宙の旅の途上のさまざまなトラブルも、

驚くほどリアルです。

宇宙が好きな人にとっては、もうそれだけでドキドキしっぱなしでしょう。

 

人類はどうあるべきか、科学のあり方、文明のあり方は、といったテーマを

深く追求し、父と子という個人の物語をも内包して、

台詞を最小限に抑えた静かな作品は、澄んだ水のように、心に染みます。

 

明日9月20日(金)から全国ロードショー公開。

『ゼロ・グラビティ』や『オデッセイ』も、宇宙空間での主人公の孤独が

ひしひしと感じられましたが、『アド・アストラ』は、もともと人との関係が

うまく築けないというロイのキャラクターによって、その孤独はいっそう際立ちます。

言葉を失うほどの圧倒的な映像と、暗黒の中の限りない孤独を肌で感じるには、

ぜひ、大きなスクリーンでご覧くださいね。

キャラクターの名前のつけ方2019年09月24日 14:43

サラファーンの星の登場人物に、名前をつけるにあたっては、
おもに5つのパターンがありました。

1:自然と浮かんでくるものにする。
2:好きな名前をつける。
3:考えてつける。
4:別の作品の使い回し。
5:犬の名前からつける。

1:最も多いのが、この自然に浮かんでくるもので、
ルシタナやウィルナー、ランドリア、ロンドロンド、ヨルセイスなどです。
(エルディラーヌなど国の名前や地名も、ほぼこれです。)

2:次に多いのが、好きな名前です。
マリアやステラン、レイン、ピップなど。
サラ(沙羅)は昔から響きが好きで、今回は地名にも人名にも使いました。
ユリディケは、オルフェウスとエウリュディケの神話から。

3:たまに、考えてつけます。
たとえば、前に紹介した、『石と星の夜』に登場する白猫。
水夫のパコが可愛がっているので、水夫をもじって、スーフィ。

また、同じ『石と星の夜』に出てくる王子は、簡単な名前にしようと思いました。
ただでさえキャラが多く、覚えられない!と言われていたので、
出番の少ないこの王子は、極力簡単にしたかったのです。
なんという名前にしようかな〜。
なんという名前・・・そうだ! 「なんと」にしよう。
というわけで、「ナント王子」。ほんと、適当ですねえ。

もう少し真剣に?考える場合もあります。
たとえば、盗賊のピップは、ディケンズの小説『大いなる遺産』の主人公と
同じ名前です。『大いなる遺産』のヒロインはエステラ。
なので、ピップが追う伝説の宝石の名を〈エステラの瞳〉にしました。

4:『ユリディケ』に登場する名前を使い回した例もあります。
戦士デュー・レインの苗字は、四部作ではリーヴ一家の苗字、というように。

もうひとつが、ロデス伯父さんとイルナ伯母さんの名で、
『星水晶の夜』に登場する諜報員として使い回しました。
(これ、どこかに書いたかな。生まれかわり、というわけではなく、
名前を拝借した形です。諜報員の運命に思いを馳せると、どうしても
そうしたくなってしまって。)

5:犬の名前に関しては、二巻のあとがきに書いたとおりです。
昔、祖父母の家にいた犬ダンとジョーの名を、黒のジョーとダン伯父さんに。
『インディアナ・ジョーンズ』は、飼い犬インディから名づけられたのですよね。
なので、犬から人もありかな、と。

そのほか、ハーシュは、卒業旅行で訪れたニュージーランドで、
農場に滞在したとき、愛馬マーキュリーに乗せてくれた優しい少年
ハーミッシュからとりました。
ありがとう、ハーミッシュ(*^_^*)
きっと今頃、立派な大人に成長しているだろうなぁ。
ラグビーのワールドカップ、観てるかな。