LGBTQ+とサラファーンの星〜1:ヴァレッタ ― 2025年02月04日 11:59
薬草使いの少女ラシル(&パーシー大尉) ― 2022年10月11日 14:50
弟が大好きなんだけど、自分にはないその才能に、嫉妬も感じてしまう
リーの姉ラシル。
リーが、まっすぐで、いつも心のまま、直感に従って大胆に動くのと比べ、
内向的で理性的。行動も控えめ。(少し複雑な内面を抱えていますが、
心の奥はとても清らかです。)
彼女を深く知るのは、ちょっと時間がかかったけれど、
名前はすぐに浮かびました。
ラシル。〈サラファーンの星〉に名前だけ登場する伝説の少女の名。
ルシタナの時代よりもさらに二千年前、干ばつに苦しむ茶の村で、
村人たちを新たな地へと導いたという少女です。
枯れ果てた茶畑で、ただ一本だけ残った若木をたずさえて、
長く厳しい旅の果て、ラシルと村人たちは、
茶の栽培にふさわしい、霧と春の雨に恵まれた土地を見いだし、
村は少女にちなんで、ラシルと呼ばれるようになります。
前々回、薬草使いの少年Part2で話したように、
その遠い時代、リーは愛と平和をうたう詩人でした。
彼は反戦を訴え、時の国王(のちのグルバダ)に処刑されますが、
その翌年、大干ばつが世界を襲い、
ラシルの村の茶畑も壊滅的な被害を受けたのです。
なんとなく、見当がつきますよね?
リーの姉ラシルは、遠い昔、その伝説の少女だったのかなって。
詩人が処刑されたあと、彼女は〈天の声〉を聞き、村人たちを東へと導くのですが、
当時、詩人とラシルは遠く離れて、互いの存在を知らないながら、
魂の深いところではつながっていたのかな、と感じています。
その2000年後、ルシタナの時代、ふたりは現実の世界で会います。
『石と星の夜』で、暗殺事件を追う諜報員パーセローが、
ひとめ惚れした宿屋の娘、サラの証言によって、たどりつく村がラシル。
(でも、サラは彼の追う容疑者に恋しているから、思い切り片思い。)
パーセローは、トゥーリー(黒のジョー。のちのリー)と協力して、
巨大な陰謀に立ち向かい、
それが縁で、サラとトゥーリーは会うことになるのですが、
書きながら、サラの前世は伝説の娘ラシルだったかも、と思っていました。
今回、薬草使いの少女として登場したラシルは、
茶畑を救ったときと同じ名前を授かり、やっぱり、自然を愛し、薬草を摘み、
あらたな時代に生きている、そんな感じがしています。
『石と星の夜』で彼女に恋したパーセローは、
不器用で、なかなか気持ちを打ち明けられなくて、書く方としては、
もう〜!って感じでした。
(諜報員としては、パーセローはよく動き、よくしゃべり、勘も鋭く、
本当に書きやすいキャラだったのですが、恋となると、てんでだめ。)
『ユリディケ』では、最初からもう少し楽しく出逢えて、恋ができると
いいなと思って、彼には、ルシナンの若き将校パーシー大尉役で
登場してもらいました。
同僚だったワイスとは今度も仲間。
そしてラシルには、やっぱりひとめ惚れ。
パーシーという名前は、『石と星の夜』を書く際、
パーセローという音が覚えにくいかな、と、代案として考えた名前です。
ひょろりと背が高く、明るい茶色の瞳で、金髪をしているのは、
パーセローのときと同じ。
ただし、違うところが一点。
前は、額の生え際が後退しかけて、髪が薄いのを気にしている若者だったので、
今回は、彼のあこがれだった、ふさふさの金髪にしました。
前回がんばってくれたもんね。それくらいご褒美がないとね。
ラシルとパーシーが、この先どうなるかは、わかりません。
ラシルは、村の薬草使いとして生きる決意をしているし、
彼の方の未来は(かなり長く蒼穹山麓にいるとしても、その後は)不確かです。
でも、わたしとしては、立場の違いや、さまざまな障害を乗り越えて、
うまくいくんじゃないかな、と思っています。
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文庫版のジャケットは鈴木康士先生。このイラストを見たときもびっくりしました。
ルシタナのイメージが、わたしが思い描いていた以上にルシタナに近かったからです。
ルシタナは父に武術を習い、母の勇気と芯の強さを受け継ぎ、愛情を一心に受けて
銀の森でのびのび育ちましたが、心の奥には、
人とフィーンのあいだに生まれた、たったひとりの存在としての孤独を秘めています。
ジャケットのルシタナのまなざしには、そんな強さと悲しみとともに
どこまでも信念を貫く意志を感じました。
ところで、こちらは前回載せた『星の羅針盤』の続きです。
あの単行本の『星の羅針盤』は、長いブランクを経て本を出す新人同然の著者の本でした。
昨今の出版事情はとても厳しく、出版社も当然慎重になります。
当時は続きも完成しておらず、『星の羅針盤』一冊での契約で、
シリーズタイトル〈サラファーンの星〉は入れたものの、
シリーズとはっきり銘打つわけにはいかなかったようです。
一冊読みきりと思って買ってしまい、そんなー!と思われた方も多かったと聞きました。
本当にごめんなさい。(シリーズでなければ契約しないと言えればよかったですが、
おそらく、そんなことを言ったら、この話はなかったことに、となっていたかな…。)
単行本は売れず、続きの出版は立ち消えの危機に。
そんなとき、一緒に完成を目指してきた担当編集者小林さんの尽力で、
文庫本でシリーズ化されることになったのです。
いざとなったら自費出版と覚悟していたのですが、ほっとしました。
単行本と文庫本ではイラストレーターが変わるとのことで、お任せしました。
キャラクター相関図でイラストを描くにあたり、リーヴとルシタナは、思いきり、
牧野先生と鈴木先生のイラストを参考にさせていただきました!
もちろん力が及ぶはずもなく、わたしの頭の中のイメージに近づけるのに苦労しました。
そしてやっぱり、おふたりの絵の方が断然本人に近いなあと、今も思っています。
(最初、Webサイト用に相関図を描いたときは、リーヴとルシタナは、
ジャケットをコピーして切り抜いて、貼り付けました。その図、おいおい載せますね。)
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