LGBTQ+とサラファーンの星〜2:ハル・ソーン2025年02月22日 12:11


ハル(色付き)

サラファーンの星とLGBTQ+のお話の続きです。今日は、ハル・ソーン。
都の通信員で通っていますが、その実は、王室情報部の精鋭「第七班」の諜報員。
同じ諜報員だったロンドロンドの友人で、ディヴァレアン王子の学友。
父親のソーン卿は、第七班の長で、生まれも育ちも良いはずですが、若いときから
大いに羽目を外す問題児。
でも、大胆不敵な性格と、その知性を買われ、諜報の仕事についています。
いつもクールで、どこか世の中を斜に見ている三十代の独身男。
本人がいうには「第一夫人は酒、第二夫人は海」。
酒に強く、各国の情報を集めるため何度も航海に出て、海をこよなく愛しています。
どこから見ても、頼れる兄貴のハルですが、わたしの想像なんですけれど、
性根は優しく、感性が鋭く(そうじゃないとスパイは務まりませんよね)
繊細な一面も持っています。

第一巻では、諜報の仕事から足を洗ったロンドロンドに、昔の仕事に戻るよう持ちかけ、
第二巻で、説得に成功し、ともに命を懸けて世界を守るために奔走しますが、
これも作者の想像ですけど、ハルはずっとロンドロンドを愛していたんじゃないかな。
おそらく、学生時代、最初に会ったときから。
そのロンドロンドが、ずっと従姉のフェルーシアに恋していることは察知しているので、
自分の恋が実らないものであることも知っている。だから、決して口にしません。
そして、ロンドロンドの幸せを祈って、「(従姉に)告白しろよ」とアドバイスし
恋の行方を見守ったりしちゃいます。

書きながら、ハルの想いを感じて、ちょっと切なかったです。
父親のソーン卿も、気がついているだろうなと思いました。
それでも、第七班の長として、息子やロンドロンドの仕事を、黙って見守っている。

ハルは、諜報員としてすこぶる優秀で、物語は彼の活躍なしには成り立ちません。
第四巻で取る、彼のある行動も、もちろん、世界を救うためではあるのですが、
愛するロンドロンドを救うためだったのだろうという気がしています。

でも、いつもお伝えしている通り、それぞれの読者の方が、キャラクターも物語も、
余白の部分を好きなように想像するのが、読書の醍醐味だと思っているので、
ハルのことも、同性愛者に限らなくてもまったくOKです。
プレイボーイで、港みなとに彼女がいるかもしれないしね!

ところで、キャラクターのイラストとして、世の中を斜に見る彼には、文字通り、
斜に見ているポーズがほしかったので、荒川ディレクターのアドバイスに従いました。
すなわち、「描きたいポーズを自撮りをして、スケッチをする」。
で、男性の身体の厚みを出すために、ガウンなどをモコモコ着込んで、
その上に、知人からもらった、ゆったりしたシルクのシャツをまとい、
でーんと構えて、腕組みしました。
↓↓
キャラ用自撮り

逆サイドの腕とか、指とか、ああ、こうなるんだとわかって、確かに描きやすかったです。
なお、公式サイト掲載のイラストは、デザイナーの畠山さんが、わたしの素人絵を、
デジタルのイラストに仕上げてくれたものです。「砂色の髪」とかベストや柄の色合い、
そでのゴミをとってください、など、いつもながら面倒なリクエストにも動じず、
本当にありがたかったです。

今朝は名古屋でも小雪が降りました。でも、歩けるくらいで、しっかりリハビリのための
散歩をしてきました。
日本海側を中心に大雪が続いていますが、能登は特に厳重警戒だそうで、
地震や大雨のあとも大変な日々が続いていて、被災地の方々の大変さは想像もつきません…。できるだけ被害が少なく、寒波が早く過ぎることを祈っています。

絵とピアノとタイムリミット2025年02月17日 15:20


水彩色鉛筆

先日、ガンの寛解後、最初の検査結果を聞いてきました。
「状態変わらず」ということで、それはよかったのですが、
抗がん剤の副作用である末梢神経障害は、半年から1年ぐらいたって治らなければ、
一生残る場合が多いそうです。
手の痺れが、治療直後よりも、ほんの1ミリずつよくなっている感覚があったので、
そのことを先生に伝えると、そう言われました。
今がリハビリの頑張り時だそうです。
治療が終わって一年というと、タイムリミットは10か月を切っています。
わぁ〜。真面目にやらなきゃ!(別に今まであえてサボっていたわけではありませんが。)

足の麻痺は、マッサージと歩くくらいしかないようですが、手は使ったほうがいいそうで、
イラストを描こうと思っています。
前に書いたと思いますが、サラファーンの星のキャラクターを(おだてられて)描いたとき、
ほんとーに大変だったので、もう二度とイラストは描かない!と宣言したのに、
『ユリディケ』を書き終えたら、やっぱり紋章やキャラクター相関図を作りたくて、
紋章と地図まで描いたところで発病し、キャラはペンディングになっていました。
でもきっと、指のリハビリになる!と思って、少しずつ始めようと考えているところです。

サラファーンのときに参考にしたイラストの本はほとんど捨てちゃったけど、
水彩色鉛筆はさすがに捨てられずにとっておきました。
上の写真がそのセット。母が持っていた24色に加えて、さまざまな水色を中心に
東急ハンズで買い足したものと、コンパス(紋章を描くのに使いました)と絵筆など。

下の写真は、そのお絵描き道具をしまっている箱。
甥っ子が生まれた時、父の知人がプレゼントしてくれたクマちゃんのお皿が入っていた
運べるケース。可愛いので、ずっと前には、カセットテープを入れていました。
(カセットテープ! わかります? 巻き戻しとかできるやつです。巻き戻しって
死語なんですってね。)

お絵かきセット

あと、2年前に買って放ってあった電子ピアノを、少しずつ弾き始めています。
Eテレでやっていた「3か月でマスターするピアノ」を録画していたので、
見てみましたが、初心者にサティの『ジムノペディ』。ハードル高い!
バイエルまで習った人には、ショパンの『革命』。マジ? 私の場合、
ピアノを弾いていたのは中学二年まで。
右手の音符の読み方はだいたい覚えていますが、左手の読み方は完全に忘れています。
(どこが基本のドですか?という感じ。)

電子ピアノを買ったのは、『麗しのローレア』の副旋律を譜面に起こすためで、
曲は頭の中にはあるので、それを楽譜にしたいのですが、まずは、しっかり左手の
譜面を読めるようにしなければ。
3か月でマスター〜の本田先生、すごく可笑しくて、楽しいです。
(でも、生徒さんは大変ですよね。)
昔弾いたショパンやシューベルトも弾けるようになるといいなぁ。
それで末梢神経障害のリハビリになるのだから、一石二鳥?

というわけで、体力を取り戻すために日々散歩しながら、手のリハビリも続けています。
(すぐにめげそうなので、こうしてブログに書いて、逃げないようにしています😆
その効き目のほどは、果たして?!)

手足は、痺れているのにひどく痛む時があって、毎朝、足の痛みが目覚まし時計みたい
でしたが、朝の痛みがだいぶよくなってきたので、やっぱり歩くのはいいのかな。
ほかにも、まだ副作用が残っていますが、基本、焦らずに、と思っています。
千里の道も一歩から、ですね!

LGBTQ+とサラファーンの星〜1:ヴァレッタ2025年02月04日 11:59


ヴァレッタ

さて。お約束の〈サラファーンの星〉とLGBTQ+のお話。初回はヴァレッタです。

アトーリス王国の都にある士官相手の高級倶楽部にいる女性。
脇役で、ほとんど出てこないので、キャラクター相関図には入れていませんが、
ありありと浮かんでくるキャラで、相関図のイラストを描いている時、
落書きみたいに描かずにはいられませんでした。それがこの鉛筆のスケッチです。

彼女の話をする前に、まず、とても大事なことを。
登場人物について(物語もそうですが)私はすべてを知っているわけではありません。
むしろ、謎の部分のほうが多いです。
だから、読者の方がそれぞれ感じることが、正解であって、ここでのお話は、
あくまで私が感じたことです。
キャラクターによっては、わりとはっきり主張する人もいれば、曖昧な人もいます。
そうかな〜と私が察するくらいの感覚が、最も多いかもしれません。

ヴァレッタが最初に登場するのは『石と星の夜』。
王室情報部のステランとパーセローが、暗殺事件の捜査線上に浮かんだ陸軍士官
〈ハンター〉の愛人であった彼女に会うシーン。です
洒落た小窓のある部屋で、ヴァレッタは鏡台に向いて化粧をしながら、鏡越しに
彼らの質問にこたえます。つり上がった目に、燃えるような赤銅色の髪。
ステランのことは「坊や」と呼び、刑事コロンボみたいにしつこく質問を繰り出す
パーセローも軽くあしらい、愛人だった〈ハンター〉に対しても、氷のように冷たい態度。
パーセローは反発を感じますが、話しているうちに、鏡を通してこちらを見る妖艶な
まなざしに思わず惹かれ、そんな自分にぎょっとします。

ヴァレッタが〈ハンター〉の愛人であり、事件の鍵を握っていることは、
平民に身をやつした王子ランドリアを通して、ステランに知らされるのですが、
ヴァレッタとランドリアの間には、深い信頼関係があります。

ランドリアの正体をヴァレッタが知っていたかどうかは、私にもわかりません。
なんとなく感じていたのかもしれません。
ただ、ヴァレッタはランドリアにずっと恋心をいだいていて、
〈ハンター〉とは、仕事上の付き合いだったとは思っています。
そして、ヴァレッタには、同じ職場に女性の恋人がいたのではないかと。
どんな彼女だったのかなぁって想像するのですが、ランドリアと同じ黒い髪か、
あるいは金髪。そして年下で、可愛らしい感じの女性じゃないかな。

ヴァレッタを描くのは楽しかったです。自由に生き生きと動いてくれて、
とりわけ好きなキャラクターでもあります(興味のある人しか描かないから、
キャラは誰しも、どこかしら好きになるのですが)。
旅芸人の娘として生まれ、国中を渡り歩いたあと、今の仕事について成功を収めている。
自分に忠実で、彼女の中では、一本通ったものがある女性。
ある意味、一匹狼として裏の世界をわたるランドリアと共通点があります。
だから、信頼しあえたのでしょうね。
頭の良い女性で、ランドリアには愛する女性がいて、自分は決して愛の対象には
なりえないこともよく知っている。
だから、女性の恋人がいながらも、いつも心の奥には切ない思いがある。
それがたぶん恋人も知っていて、それでもヴァレッタを受け入れているのではないかな。
そんなふうに私は感じています。
でも、ヴァレッタは異性愛者だと思ってもらっても、まったくかまいません。

☆   ☆   ☆

日本でも、自治体単位では、同性愛者の権利が少しずつ認められつつありますが、
アジアで最も進んでいるのは、最初に同性婚を認めた台湾ですね。それからネパール。
そして、1月23日には、タイで同性婚を認める法律が施行されました。
タイではこの日、1832組の同性カップルが婚姻届を出したそうです。

人はもともと、多種多様な存在なのだと思います。それが自然であり、
そのようにつくられているのだと。
マジョリティが幅を利かせるのではなく、多様性を認める寛容な社会でありたいですね。

チェスターのようなワンちゃんに会いました2024年12月15日 16:11

ふたご座流星群の季節。寒い中、いつもなら外に出て夜空を見上げるのですが、
今年はその体力がなくて、時々窓から空を見上げただけで終わりました。
雲間から、木星がきらきらときらめいているのが見えましたが、
雲が流れる中で、流星を見ることはできませんでした。
でも、流れ星がたくさん降り注いでいると想像するだけで素敵ですね☆

このところ寒さが厳しく、風も強いのですが、今日の午後は母と散歩に出ました。
母は杖をつき、わたしは例によって低血圧でふらふらしながら歩くので、
「二人で一人前」です。

近くの住宅街の中をゆっくり歩いていると、ゴールデンレトリバーを連れた女性が
先の四つ辻に現れました。
ゴールデンはおっきくてちょっとベージュ色で、まさに、〈サラファーンの星〉に
登場するチェスターのイメージです!

わぁ〜、なんて可愛いの!と思わず見つめてしまうと、まだ離れていたのですが、
ワンちゃんもわたしの視線に気がついて(飼い主さん〜長身の素敵な女性〜は
左に曲がろうとしていたのに)こちらに来たがる素振りをしました。
なんだか申し訳なく、優しそうな飼い主さんと黙礼を交わすと、彼女は道を変えて
こちらに。そして、ワンちゃんは、まっすぐわたしの方に寄ってきてくれました。
わーい、嬉しい。
手の甲をそっと差しだすと、ワンちゃんは両手の間にフンフンと顔を突っ込み、
熱烈なご挨拶。首をなでたら、道にころりと転がって、お腹を見せてくれました。
本当にひとなつこい! きっと愛情いっぱいもらって、幸せな人生(犬生?)を
送っているんだな。
「どうもすみません」と女性。いえ、こちらこそ(引き止めてしまって)
すみません、とこたえながら、お腹をなでさせてもらいました。
優しい飼い主さんとチェスターそっくりの可愛いワンちゃんのおかげで、
マーガレットが亡くなって沈んでいた心が、ぽっと温かくなりました。

ワンちゃんがわたしのひじに手をかけて、ねえねえ、というふうに言った(少なくとも
そんなふうに言ってる気がした)大きな手の感触が、今も腕に残っています。

数日前は9歳のときに亡くなった祖母の命日だったし、友人の一周忌も迎え、
マーガレットの旅立ちも重なり、12月は寂しい月ともいえますが、
亡くなった人たちは、あとに残してきた家族や友人に笑っていてほしいかな、とも
思います。笑うのが難しい日もあるけれど、今日のようなことがあると嬉しいですね。
やっぱり、神さまは親切だなと思います。

ノーベル平和賞のことなど書きたかったので、また近々書きますね。

アラン・ドロンとサラファーンの星2024年08月19日 20:40

アラン・ドロンが亡くなりました。
数年前に脳卒中で倒れて以来、体調を崩していると聞いていて、いつかはこの日が来ると
覚悟はしていましたが、やっぱり寂しいです。
中学生の時、人生で初めて、ファンになった「スター」だったから。

当時のアラン・ドロンの人気ときたら、本当にすごくて、映画雑誌の表紙を何度も飾り、
映画もたくさん公開されたり、テレビでオンエアされたりしていました。
日本のCMにも出ていました。レナウンのダーバン! 愛馬と一緒のが特に好きでした。

こんな美しい人がこの世にいるだろうかと信じられない思いでしたが、
美しさよりも、彼の翳りに惹かれました。
4歳のとき両親が離婚。母親に引き取られるも、母の再婚で里子に出され、
いくつもの学校を(問題児だったため)放校になり、
17歳で軍隊を志願、インドシナ戦争に従軍し、軍でも問題を起こしたそうです。
たぶんずっと、愛情を求めていたのだと思います。

恋多き人でしたが、5年に渡る婚約が破綻して、長すぎた春と言われた
ロミー・シュナイダーとのその後の逸話は、とても胸を打たれます。
別れたあともずっと気にかけ、ロミーの一人息子が悲劇的な事故で亡くなったときには
半狂乱のロミーに代わって、葬儀をすべて準備したり、その後ロミーが亡くなった際には
3日間棺に付き添ったと言われています。そして、葬儀は静かなものにしたいと
(メディアが騒がないように)自身は出席しませんでした。
ボディガードが他殺体で見つかったときには、殺人容疑がかかりました。
この事件は未解決のままです。
真実はわかりませんが、この事件が彼の人生に大きな影を落としたのは
間違いありません。
そんなところも含めて、謎多き人ですが、犬と馬が大好きなことでも知られています。
孤独な分、動物と心を通わせることができるんだなと感じます。

青春の1ページのアラン・ドロン。
高校生の時に書いた短編の一つは、彼をモデルにしています。
また、ずっと前、このブログに書いたように、サラファーンの星のダイロスのイラストを
描くときには、彼の写真をたくさん参考にしました。
ダイロスは金髪ですので、髪の色は違いますが、アラン・ドロンの翳りと冷たい美しさを
投影したイメージです。こちらが、モノクロのスケッチ。(本物の美貌には届かないけれど
精一杯描きました。)

ダイロス・スケッチ(部分)by fumiko

そしてもう一人。まだ記事にはしていませんが、いつか書こうと思っているキャラが
ロンドロンド。
アラン・ドロンの明るく純粋で繊細な一面を投影したキャラクターです。
俳優として、ルネ・クレマンやヴィスコンティなど、超一流の監督と仕事をした人ですが、
ヴィスコンティの『若者のすべて』は、本当にピュアで心やさしい若者を描いて秀逸です。
ロンドロンドのイラストを描くときも、無論アラン・ドロンの写真を参考にしました(が、
全然似ていなーい! とても難しかったです)。

特に好きな映画は『冒険者たち』。これも前にブログで書きましたが、ヒロインの
レティシアがとっても素敵で、ジョサの母親の名前をレティにしました。
日本版とアメリカ版は、エンディングでアラン・ドロンが歌う『愛しのレティシア』が
流れます。テノールの素敵な歌声です。(ロンドロンドは歌が上手で素晴らしいテノール)
フランソワ・ド・ルーベ作曲で、主題曲ともども、口笛が印象的な、一度聞いたら
忘れられない曲です。かつてはレコードを買いましたが、今はCDを持っています。

抗がん剤の副作用の痛みで眠れないとき、何度も聴いていました。
不思議と気持ちが落ち着くんです。
それで、彼はどうしているかなと思っていたのですが。
亡くなった直接の原因は公表されていませんが、悪性リンパ腫を患っていたそうです。
B細胞型。私が罹患しているガンと同じタイプのリンパ腫です。
彼は逝ってしまったけれど、私は頑張って治さなくちゃね!

今週、4回目の抗がん剤の投与を受けます。
その直前、訃報を受け、思わずこの記事を書かずにはいられませんでした。

たくさんのインスピレーションを与えてくれたアラン。ありがとう。
いまごろ、先に旅立った愛する人たちと再会して、喜びに包まれていますように。

GODZILLA〜ゴジラのチョコレートケーキ2024年05月25日 06:30


ゴジラのケーキ

昨日、妹とふたりで家族の用事で金山に出かけました。
ちょっと疲れたし、たまにはホテルのロビーで優雅にお茶して帰ろうと、
ANAホテルに寄りました。
観光客で混んでいて驚きましたが、ロビーラウンジのショーケースにゴジラ発見。
上の階の美術館で「庵野秀明展」をやっているとのことで、タイアップ企画でした。
ケーキのタイトルは、そのものずばり〈GODZILLA〉。

妹は普段ならわたしが選ぶであろうイチゴのタルトとレモンティーを、わたしは
せっかくなのでゴジラのチョコレートケーキとミルクティーを頼みました。

白に金の枠の入ったシンプルなお皿に載ってきたのが、こちらのGODZILLA。
説明によると「ミルクチョコレートの中に、生キャラメルとキャラメルクリームを閉じ込め
ゴジラのチョコレートをのせました。一点一点手作りのゴジラチョコレートは、顔の違いを
お楽しみください」私のゴジラちゃんは、ちょっとユーモラスな雰囲気。
(クリック拡大で見えるかな?)
ちょっと甘そうで、実はあまり甘いケーキは得意ではないけれど、
友だちが『ゴジラ−1.0』に携わっていたので、(庵野さんの『シン・ゴジラ』ではないですが)なんだか嬉しくなって、迷わず選びました。
さっそくゴジラのチョコをがぶり。ラズベリージャムが散りばめてあり美味しかったです。
下の丸いところはほぼムースで甘かったけど、周りはちょっとビターだし
ラズベリーがひとつアクセントに載っているし、ゴジラの台はしっかり硬いビターチョコで
美味しかったです。

広告会社に勤めているころ、庵野さんが携わった『オネアミスの翼』をその友だちと見に行ったことがあります。展覧会では『オネアミス』関連も出展されていたようでした。
膀胱炎が治りたての妹。私も家族や自分の病院の梯子が続いていたあとで、展覧会には
寄らずにそれぞれ帰宅しましたが、やっていることを知っていたら、『オネアミス』の
絵コンテなど拝見したかったな。
展覧会は6月23日まで開催しています。ファンの方はぜひどうぞ。チケット提示で
ゴジラチョコは10%Offだそうです。

庭師のサピ〜心優しい脇役2022年10月28日 14:00

サンザシ館の心優しい庭師のサピは、『ユリディケ』のオリジナル版では
影も形もありません。でも、〈サラファーンの星〉で、サンザシ館の庭師だった
サピには、ぜひ出てほしくて、改稿版では、
発掘された迷宮の薬草園の庭師として、登場してもらいました。

(サラファーンでは、本人は一度も登場せず、人の話の中に庭師として
出てくるだけです。脇役の中でも脇役だったので、
『ユリディケ』で庭師のサピが出てきたとき、
あ、これもしかして、サンザシ館の庭師のサピだった人?と気づく方は
限りなくゼロに近いというか、おそらく誰もいないだろうと思います。
ただ、作者として庭師のサピは好きだったので、今度こそ、
セリフも動きもあるキャラクターとして、出てほしくて。)

で、『ユリディケ』では、薬草使いのリーと一緒に薬草の世話をしていて、
リーのことをさりげなく気にかけてくれる、やっぱり心優しい庭師です。
素朴で、ほとんど話さなくて、いつもぼんやりしたように見えますが、
植物を愛し、心を込めて世話をしていて、実は、観察眼も鋭い。
ほんとうに出番の少ない脇役だけど、
横暴な将校から、リーを守る(それが結果としてユナを助けることに
つながる)重要な役割も帯びています。

四部作では、最終的に、少しでも短くするため(ページ数の制限から)
サピの部分をかなりにカットしたので
前にこのブログで彼のことを書いた時、もしかして全部カットしてるかも、と
お話したのですが、きちんとチェックしたら、わずかに残っていました。

『星の羅針盤』で、スピリがサンザシ館の名の由来となった、玄関の東にある
サンザシのことを、語るシーン。
八重のサンザシもあるけれど、一重のほうが奥ゆかしくてずっと気品があるとして
「庭師のサピも昨日そういってましたっけ。たまにはあの子もまともなことを
いいますね」というセリフ。
サンザシ館のサピは、やっぱりぼんやりとした青年で、これはカットしてしまった
けれど、服をよく前後ろに着て、全然気がつかない、といったキャラ。
植物が好きで、たぶん奥手で、ガールフレンドもいない。
でも、庭の手入れをして、植物と話すのが、なによりも好き。

『星水晶の歌』では、そのサピも、戦争に行ってしまいます。
(最初の音楽祭の時は、もくもくと手伝ってくれたのに、二度目の音楽祭の時は
遠い異国の戦場にいます。)
彼がどうなったか、四部作ではふれていませんが、きっとフィーンに助けられて
エルディラーヌに渡ったんじゃないかな。そうであってほしいです。
その願いを重ねるように、改稿版の『ユリディケ』に出てもらいました。
二千年前も、リーやラシルと会っていたんじゃないかなって、思いながら。

脇役って、妙に気になってしまって、その人の背景、家族、生い立ち、故郷など
どうなのかなって、考えることが案外あります。
メインの登場人物は、もちろん、厚いファイルになるほど徹底的に
人物造形を考えますが、脇役にはそこまで時間をさきません。
(というか、締め切りを考えると、その余裕がないんですね。)
でも、なんだか脇役って、好きになってしまうんです。だから、その人に関して
知りたくなってしまうというか。
たとえば、ドーリーの奥さんとかもそうだったなぁ。
意外に、謎めいたまま(作者にもなかなか身の上を明かさない)なのが、スピリでした
そういうところも含めて、彼女のキャラだったのかな、と、今あらためて思います。

薬草使いの少女ラシル(&パーシー大尉)2022年10月11日 14:50

弟が大好きなんだけど、自分にはないその才能に、嫉妬も感じてしまう

リーの姉ラシル。

リーが、まっすぐで、いつも心のまま、直感に従って大胆に動くのと比べ、

内向的で理性的。行動も控えめ。(少し複雑な内面を抱えていますが、

心の奥はとても清らかです。)

 

彼女を深く知るのは、ちょっと時間がかかったけれど、

名前はすぐに浮かびました。

ラシル。〈サラファーンの星〉に名前だけ登場する伝説の少女の名。

ルシタナの時代よりもさらに二千年前、干ばつに苦しむ茶の村で、

村人たちを新たな地へと導いたという少女です。

枯れ果てた茶畑で、ただ一本だけ残った若木をたずさえて、

長く厳しい旅の果て、ラシルと村人たちは、

茶の栽培にふさわしい、霧と春の雨に恵まれた土地を見いだし、

村は少女にちなんで、ラシルと呼ばれるようになります。

 

前々回、薬草使いの少年Part2で話したように、

その遠い時代、リーは愛と平和をうたう詩人でした。

彼は反戦を訴え、時の国王(のちのグルバダ)に処刑されますが、

その翌年、大干ばつが世界を襲い、

ラシルの村の茶畑も壊滅的な被害を受けたのです。

なんとなく、見当がつきますよね?

リーの姉ラシルは、遠い昔、その伝説の少女だったのかなって。

詩人が処刑されたあと、彼女は〈天の声〉を聞き、村人たちを東へと導くのですが、

当時、詩人とラシルは遠く離れて、互いの存在を知らないながら、

魂の深いところではつながっていたのかな、と感じています。

 

その2000年後、ルシタナの時代、ふたりは現実の世界で会います。

『石と星の夜』で、暗殺事件を追う諜報員パーセローが、

ひとめ惚れした宿屋の娘、サラの証言によって、たどりつく村がラシル。

(でも、サラは彼の追う容疑者に恋しているから、思い切り片思い。)

パーセローは、トゥーリー(黒のジョー。のちのリー)と協力して、

巨大な陰謀に立ち向かい、

それが縁で、サラとトゥーリーは会うことになるのですが、

書きながら、サラの前世は伝説の娘ラシルだったかも、と思っていました。

 

今回、薬草使いの少女として登場したラシルは、

茶畑を救ったときと同じ名前を授かり、やっぱり、自然を愛し、薬草を摘み、

あらたな時代に生きている、そんな感じがしています。

 

『石と星の夜』で彼女に恋したパーセローは、

不器用で、なかなか気持ちを打ち明けられなくて、書く方としては、

もう〜!って感じでした。

(諜報員としては、パーセローはよく動き、よくしゃべり、勘も鋭く、

本当に書きやすいキャラだったのですが、恋となると、てんでだめ。)

『ユリディケ』では、最初からもう少し楽しく出逢えて、恋ができると

いいなと思って、彼には、ルシナンの若き将校パーシー大尉役で

登場してもらいました。

同僚だったワイスとは今度も仲間。

そしてラシルには、やっぱりひとめ惚れ。


パーシーという名前は、『石と星の夜』を書く際、

パーセローという音が覚えにくいかな、と、代案として考えた名前です。

ひょろりと背が高く、明るい茶色の瞳で、金髪をしているのは、

パーセローのときと同じ。

ただし、違うところが一点。

前は、額の生え際が後退しかけて、髪が薄いのを気にしている若者だったので、

今回は、彼のあこがれだった、ふさふさの金髪にしました。

前回がんばってくれたもんね。それくらいご褒美がないとね。

 

ラシルとパーシーが、この先どうなるかは、わかりません。

ラシルは、村の薬草使いとして生きる決意をしているし、

彼の方の未来は(かなり長く蒼穹山麓にいるとしても、その後は)不確かです。

でも、わたしとしては、立場の違いや、さまざまな障害を乗り越えて、

うまくいくんじゃないかな、と思っています。