41年目の結婚祝い2025年10月15日 09:24


雨上がりのオリーブ

昨日、大学のアーチェリー部の仲間から同期女子宛てにメールがありました。
ちょっと報告したいことがあるとのタイトルに、なんだろうと思って開けると、
結婚祝いに私たちが贈ったNationalのオーブンレンジが41年も稼働したとのこと。
本当にびっくりしました。

最近スタートボタンの具合が不調でとうとう引退してもらうことになり
電気店でPanasonic(はい。今のパナは昔はNationalという名だったんです)の
店員さんに話したら、腰を抜かしたそうで。当然ですよね。

41年…! そんなに長い間、愛用してもらえて、嬉しかったです。
果報者のオーブンレンジ♡
後続もパナにしたそうで、本日、結婚祝いの品とはお別れだそうです。

彼女の結婚祝いにオーブンレンジを贈ったことは忘れていましたが、
同期で初めて新婚宅へおよばれしたとき、
美味しいビーフシチューを振る舞ってもらったのは、よく覚えています。
当時の私は、ビーフシチューはお店で食べるものであって、自分で作るなんて
発想、なかったので、いっそう感激しました。
すごく美味しいとみんなでいったら、良かった〜とほっとしたようにいい、
何時間もコトコト煮込んだと打ち明けてくれたのも記憶に残っています。
そんな一生懸命作ってくれて、美味しいはずです。食事は愛情ですね。

昨日のみんなの返信でわかったのですが、オーブンレンジを贈ったことは忘れていても
やはりビーフシチューのことは覚えているという仲間もいました。
当の彼女は、ビーフシチューのことは覚えていないそうで、
覚えていたことに、ありがとうとお返事をくれました。

先月から、たぶん猛暑の疲れだと思うけれど、末梢神経障害に加えて、
消えていた副作用が復活してきて(そんなことってあるのかな)、
味覚障害ーー口の中が不味くて痛かったり水が甘かったりーーに、低血圧のふらつきも
戻ってきて、今月検査なのになんだかなぁって思っていたところ、
思いがけず、心がぽかぽかするメールに、嬉しくなりました。

写真は、散歩した際に見かけた、雨上がりのオリーブ。
雨粒が宝石のようにきらきらしていました。

『究極の室内楽〜辻井伸行&ARKソロイスツ』2025年10月19日 19:51


金木犀

金木犀が香り、昼間の木陰でも虫の歌が聴こえるようになりました。
酷暑の夏が嘘だったかのようです。
土曜日は、そんな秋の宵にふさわしい、素敵な演奏会に行ってきました。
去年退院して以来、初めてのコンサート。
それも、大好きな辻井伸行さんがメイン奏者です。

彼の演奏を聴くのは三回目。(ネットでなく、根性で電話でチケットをゲット!)
去年も演奏会に行くはずだったのですが、思いもかけず悪性リンパ腫に罹患し、
友人夫婦に譲ったので、今回はいっそう楽しみでした。

コンサートは、『究極の室内楽〜辻井伸行&ARKソロイスツ』と銘打っています。
辻井さんの演奏は、ソロの演奏会とオーケストラとのピアノ協奏曲を聴きましたが、
室内楽は初めてです。

よく演奏会をともにされる三浦文彰さんも一緒で、二人がリーダーとなって、
気心のしれた音楽仲間が集結するとのことで、前半はすべてデュエット。
ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番の第1楽章で始まり、
フランクのヴァイオリン・ソナタのフルート版、
クラリネットとの演奏が二曲続き、
最後はブラームスのピアノ四重奏曲第1番の第4楽章でしたが、
それぞれのデュエットの相手が辻井さんをエスコートして登場し、
その様子も本当に微笑ましかったです。
どなたの演奏も素晴らしく、クラリネットのセルゲイ・ナカリャコフさんは
大変な人気でした。
高木綾子さんのフルートの音色も、天上の音楽のように美しかったです。

後半最初の曲はモーツァルトの弦楽四重奏曲第17番《狩》。
CDは持っていますが、ライブで聴いたことはありません。メンバーは全員女性で、
息のあったのびやかな演奏を聴いていると、
モーツァルトゆかりの地を旅したときのことが浮かんできました。
サラファーン4部作に登場するジョサは、たぶん前にも書いていると思いますが、
モーツァルトとショパンがインスピレーションの源です。
特に、モーツァルトの曲の、明るさの中に隠れた悲しみが、底抜けに明るいけれども
実は誰にも言えない寂しさを秘めたジョサと重なって…。
ピアノが大好きなわたしにとっては、特別な作曲家でもあります。

最後の曲は、シューベルトのピアノ五重奏曲《ます》。こちらは全員男性で、
やはりびっくりするほど息がぴったり。
シューベルトもまた、わたしにとって特別な作曲家です。
(サラファーンの星のトレイラーのBGMも彼の即興曲です。)
歌曲の《ます》の旋律が第4楽章に入っているので、このタイトルがあるそうで、
(わたしは歌曲しか聴いたことがなかったのですが)、圧巻でした!

辻井さんのピアノは本当に純粋で音がきらきらしています。
今回は、仲良しの音楽仲間と演奏する喜びと力強さも加わって、そしてまた、私が
前に聞いたときより、経験も積んで、新たな輝きを放っていたように感じました。

とっても幸運なことに、彼の横顔とピアノを奏でる手が見える席だったので、
彼の感性の鋭さが、いつも以上に伝わってきました。
シューベルトの曲は全5楽章ですが、そのうち3つが他の楽器と同時に、
1つがほぼ同時に始まり、
目が見える演奏者なら、他の奏者を見て、演奏を始めるでしょうが、
辻井さんは、気配を察して弦楽器に合わせるのです。じっと集中して
感覚を研ぎ澄ませているのが、全身から伝わってきて、心が震えました。

アンコールはこの五人で(本当にみんな仲良くてとってもチャーミング)、
チャルダーシュと真田丸のメインテーマ。
熱い曲の熱い演奏。客席の盛り上がりも最高潮に達しました。
素晴らしい演奏会のときには、いつも思うのですが、
本当に、永遠に聴いていたかったです。

国内も世界も、心配事や悲しい出来事にあふれている現在、
音楽はいっそう大切に思えます。
音楽は国境も国籍も人種も宗教も、どんな差別もありません。
五重奏曲のチェリストは、フィンランド生まれのヨナタン・ローゼマンと
韓国出身のユンソン。
前半のナカリャコフはロシア生まれでイスラエル国籍です。

世界も、心配事や悲しい出来事にあふれている現在、
音楽はいっそう大切に思えます。
世界中に美しい音楽が溢れて、愛とやさしさが広がりますように。