レッツ・チャットを知っていますか?〜意思伝達装置のクラウドファウンディング2020年02月06日 12:11

車いすの天才科学者と呼ばれたホーキング博士は、21歳のときにALSを発症。
ほとんど身体の自由を失った晩年、インテルの技術者たちが博士のために開発した
意思伝達システムを、ほおの筋肉をわずかに動かすことで操作して
コミュニケーションを取っていました。
車いすのアームに取りつけた機械の、あの独特の声を覚えている方も多いでしょう。

コミュニケーションを助けるツールは日本にもいくつかあって、
脳幹出血で倒れた友だちは、こちらの「レッツ・チャット」を使っています。
最初に友だちが、レッツ・チャットを使って「ありがとう」といってくれたときは
本当に胸がいっぱいになりました。(なんて返事をしたか、覚えていないくらい。)
レッツ・チャット

そのレッツ・チャットが、昨年、製造元のパナソニックで生産打ち切りに…!
パソコンのソフトなど、ほかに代替品があるから、という理由でした。

でも、レッツ・チャットはワンアンドオンリー。
なぜって、単体で使うので、パソコンの知識がなくてもいいし、
パソコンと違って、フリーズもほとんどなく、とてもユーザーフレンドリー。
指でもいい。頭でもいい。どこか身体のいっかしょが動けば、
思いが伝えられる装置です。
宮ぷー(友だちのニックネーム)は、いまは指先が動くようになり、
指で操作しています。

外出するときは車いすにつけ、家ではベッドに取りつけて、テレビのリモコンを
動かして大相撲やサッカー中継を観戦したり、iPadと連携させて、
アマゾンプライムで映画を見たり、ラインでおしゃべりしたりしています。

国内には、ALSや交通事故、脳幹出血などで、意思の疎通が困難とされる
重度の障がい者が10万人以上いるそうです。
症状が重く、意識がないと思われてしまう場合もありますが、実際には、
意識がある場合もあるといいます。
いわゆる、閉じ込め症候群(ロックトインシンドローム)です。

宮ぷーも、最初はそうでした。
余命3時間と宣告されたのに、妹さんと、同僚で友だちのかっこちゃんが、
絶対に聞こえていると、声をかけ続け
絶対に大丈夫と信じて、懸命にリハビリをしたのです。
やがて宮ぷーは、瞬きでこたえられるようになり、その後、
レッツ・チャットに出会い、たくさん話せるようになっていきます。

思いを伝えられる、というのは、とても大きなことだと思います。
生きよう、リハビリ頑張ろうという気力も、引き出すのではないでしょうか。
宮ぷーは、ついに退院し、訪問看護師さんやデイサービス、
ショートステイを利用して、自宅で一人暮らしをするまでに回復したのです。

生産を続けてほしいというたくさんの声がよせられ、
開発者の松尾さんは、ぜひ、そんな方たちの助けになりたいと、
新たな会社を立ち上げて、レッツ・チャットにかわる装置を作ろうと決心。
現在、クラウドファウンディングで資金を募っています。
意思伝達装置を必要とする方が身近にいる方、松尾さんを応援しようと思う方、
ぜひこちらをご覧くださいね。


〈サラファーンの星〉の第四部『星水晶の歌』では、戦場で負傷した黒のジョーが
昏睡状態になります。
意識はあるのですが、身体はまったく動かず、目を開けることも話すことも
できない、典型的な閉じ込め症候群。
医師には半ば見放され、看護師たちも傷跡だらけの身体を見て
「ろくな素性じゃないわね」などと好き勝手言うのに、追い払うこともできません。
けれど、ひとりだけ、やさしく話しかけて、手当をしてくれる看護師がいます。
その声に、彼女の存在に、ジョーはどれほど支えられたことかと思います。
そんなシーンを書きながら、宮ぷーのことを考えていました。

レッツ・チャットがパワーアップして新たな姿で登場し、
ALSなどで思いを伝えるのが難しい方、閉じ込め症候群の方など、
たくさんの人たちを支えて希望の光となるよう願って、心から応援しています!

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