『グレタ たったひとりのストライキ』2020年01月27日 16:35


グレタ たったひとりのストライキ

年末年始、『グレタ たったひとりのストライキ』を読んでいました。
グレタさんが気候のためのストライキを始めるまでの家族の物語が
母であるマレーナさんの、率直でわかりやすい語り口で綴られています。
翻訳も自然で読みやすく、先の見えない苦難の日々に立ち向かう家族の姿に
心を揺さぶられました。

物語は、グレタさんを襲ったある異変によって、
幸せだった一家に、嵐のような日々が訪れるところから始まります。

きっかけは、海に漂うプラスチックごみの映画。
南太平洋では、プラスチックごみの面積がメキシコの面積よりも大きな島を
つくっているというドキュメンタリーです。

その映画を学校で見たグレタさんは、ショックを受けて泣きだします。
ほかの子どもたちも動揺しますが、先生がニューヨークで結婚式を挙げると
言ったとたんに、その話に夢中になります。
けれど、グレタさんはみんなの仲間に加われませんでした。
脳裏に海のごみの山が焼きついて離れなかったのです。
彼女はお昼も食べられず、ひとり泣き続けました。

五年生になったばかりのグレタさんは、
食欲を失い、笑わなくなり、話さなくなりました。
パニック発作も起こすようになります。
母のマレーナさんは、こう書いています。

「体のほうが頭より賢いときもある。ほかにどうしようもないとき、
私たちは体を使って何かを伝えようとする。感情を表現する力がなく、
言葉も見つからないときは、体を語り手にする。
食べるのをやめるのもそのひとつだ。」(訳:羽根 由)

グレタさんは、2か月で体重が10キロ減少し、
入院して点滴を受けるしかないという寸前まで追い込まれます。
同じころ、彼女が学校でずっといじめに遭っていたこともわかってきます。
のちにアスペルガー症候群、高機能自閉症、強迫性障がいと診断されるのですが、
現在あれほど活躍しているグレタさんに、そんな過去があったことは驚きでした。

朝ごはんに、バナナ三分の一。53分かかって、やっとそれだけ。
あるときは、ニョッキ5個に、2時間10分。

(そんなのほんと? と思う方もいるかもしれません。
ですが、わたしの姪もグレタさんと同じ自閉症スペクトラムで
まったく同じ症状に陥ったことがあります。
笑わない、話さない、食べない。やはり、2時間以上かかって、
ほんのわずかなご飯を食べるだけ…。姪も入院の一歩手前でした。
体重が30キロを切ると命の危険があるそうです。
パニック発作も頻繁に起き、家庭は崩壊寸前。
読んでいて、他人事とは思えませんでした。)

グレタさんの両親は、全力で子どもたちを救おうとします。
最初、グレタさんのために我慢をしていた妹のベアタさんも、
あるとき発作に襲われ、ADHDや自閉症スペクトラムなどがあると
診断されるのです。

何年もの地獄のような日々をくぐりぬけ、徐々に気力と体力を取り戻しながら、
グレタさんは気候危機について、熱心に学んでいき、
待ったなしの問題なのに、なぜみんな声を上げないのか不思議に思います。
そして、気がつくのです。
科学者たちは何十年も、地球の危機的状況を訴え続けてきたのに
それが人々に伝わっていないのだと。

みんなが、科学者の話に耳を傾ければ、みんなが、温暖化について知れば
世界は変わる。
そのためにはどうしたらいいか?
グレタさんは考え、ひとつの決心をします。
〈気候のための学校ストライキ〉です。

最初、両親は賛成しませんでした。
やるならひとりでやりなさい、と彼女を突き放します。
それでも、グレタさんの決意は固く、ひとりで計画を進め、
日増しに元気になっていきます。
信念を持ち、なにかにまっすぐに向かう人間は、本当に強い!

アスペルガー症候群があるなら、そんなことはできるはずがないと
言う人もいるそうです。
それに対して、彼女は言います。
だからこそ、自分はストライキを始めることができたのだと。

アスペルガーの人は一般に社交性に欠け、みんなでなにかをすることが苦手です。
だから、どこかの組織に入って活動したり、自分で団体を作ったりはできず、
ひとりでできることを思いつき、始めたのだと。

これは、本には書かれていませんが、アスペルガーの人はこだわりが強く、
関心を持ったことをとことん突きつめる傾向もあると思います。
グレタさんの場合は知能も高いため、IPCCの科学者の報告書を熟読し、
わかりやすく伝えてくれることができたのではないでしょうか。
(本の巻末には、彼女の数々のスピーチが載っています。)

地球の環境を守っているもののひとつは、生物の多様性だといいますが、
人間の多様性もまた、世界を守っているのだと、強く感じました。

グレタさん一家は、気候研究の第一人者に会って話を聞いたり、
最先端の研究所で気候変動に関するセミナーを受けたりしますが、
読者もそれを追体験することで、複雑でわかりづらい温暖化について、
いつのまにか、少しずつ理解を深めていくことができます。

胸打つ家族の物語であるとともに、地球の現状をきちんと知ることができる、
多くの人に読んでほしい、奇跡のような一冊です。

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