庭師のサピ〜心優しい脇役2022年10月28日 14:00

サンザシ館の心優しい庭師のサピは、『ユリディケ』のオリジナル版では
影も形もありません。でも、〈サラファーンの星〉で、サンザシ館の庭師だった
サピには、ぜひ出てほしくて、改稿版では、
発掘された迷宮の薬草園の庭師として、登場してもらいました。

(サラファーンでは、本人は一度も登場せず、人の話の中に庭師として
出てくるだけです。脇役の中でも脇役だったので、
『ユリディケ』で庭師のサピが出てきたとき、
あ、これもしかして、サンザシ館の庭師のサピだった人?と気づく方は
限りなくゼロに近いというか、おそらく誰もいないだろうと思います。
ただ、作者として庭師のサピは好きだったので、今度こそ、
セリフも動きもあるキャラクターとして、出てほしくて。)

で、『ユリディケ』では、薬草使いのリーと一緒に薬草の世話をしていて、
リーのことをさりげなく気にかけてくれる、やっぱり心優しい庭師です。
素朴で、ほとんど話さなくて、いつもぼんやりしたように見えますが、
植物を愛し、心を込めて世話をしていて、実は、観察眼も鋭い。
ほんとうに出番の少ない脇役だけど、
横暴な将校から、リーを守る(それが結果としてユナを助けることに
つながる)重要な役割も帯びています。

四部作では、最終的に、少しでも短くするため(ページ数の制限から)
サピの部分をかなりにカットしたので
前にこのブログで彼のことを書いた時、もしかして全部カットしてるかも、と
お話したのですが、きちんとチェックしたら、わずかに残っていました。

『星の羅針盤』で、スピリがサンザシ館の名の由来となった、玄関の東にある
サンザシのことを、語るシーン。
八重のサンザシもあるけれど、一重のほうが奥ゆかしくてずっと気品があるとして
「庭師のサピも昨日そういってましたっけ。たまにはあの子もまともなことを
いいますね」というセリフ。
サンザシ館のサピは、やっぱりぼんやりとした青年で、これはカットしてしまった
けれど、服をよく前後ろに着て、全然気がつかない、といったキャラ。
植物が好きで、たぶん奥手で、ガールフレンドもいない。
でも、庭の手入れをして、植物と話すのが、なによりも好き。

『星水晶の歌』では、そのサピも、戦争に行ってしまいます。
(最初の音楽祭の時は、もくもくと手伝ってくれたのに、二度目の音楽祭の時は
遠い異国の戦場にいます。)
彼がどうなったか、四部作ではふれていませんが、きっとフィーンに助けられて
エルディラーヌに渡ったんじゃないかな。そうであってほしいです。
その願いを重ねるように、改稿版の『ユリディケ』に出てもらいました。
二千年前も、リーやラシルと会っていたんじゃないかなって、思いながら。

脇役って、妙に気になってしまって、その人の背景、家族、生い立ち、故郷など
どうなのかなって、考えることが案外あります。
メインの登場人物は、もちろん、厚いファイルになるほど徹底的に
人物造形を考えますが、脇役にはそこまで時間をさきません。
(というか、締め切りを考えると、その余裕がないんですね。)
でも、なんだか脇役って、好きになってしまうんです。だから、その人に関して
知りたくなってしまうというか。
たとえば、ドーリーの奥さんとかもそうだったなぁ。
意外に、謎めいたまま(作者にもなかなか身の上を明かさない)なのが、スピリでした
そういうところも含めて、彼女のキャラだったのかな、と、今あらためて思います。

薬草使いの少女ラシル(&パーシー大尉)2022年10月11日 14:50

弟が大好きなんだけど、自分にはないその才能に、嫉妬も感じてしまう

リーの姉ラシル。

リーが、まっすぐで、いつも心のまま、直感に従って大胆に動くのと比べ、

内向的で理性的。行動も控えめ。(少し複雑な内面を抱えていますが、

心の奥はとても清らかです。)

 

彼女を深く知るのは、ちょっと時間がかかったけれど、

名前はすぐに浮かびました。

ラシル。〈サラファーンの星〉に名前だけ登場する伝説の少女の名。

ルシタナの時代よりもさらに二千年前、干ばつに苦しむ茶の村で、

村人たちを新たな地へと導いたという少女です。

枯れ果てた茶畑で、ただ一本だけ残った若木をたずさえて、

長く厳しい旅の果て、ラシルと村人たちは、

茶の栽培にふさわしい、霧と春の雨に恵まれた土地を見いだし、

村は少女にちなんで、ラシルと呼ばれるようになります。

 

前々回、薬草使いの少年Part2で話したように、

その遠い時代、リーは愛と平和をうたう詩人でした。

彼は反戦を訴え、時の国王(のちのグルバダ)に処刑されますが、

その翌年、大干ばつが世界を襲い、

ラシルの村の茶畑も壊滅的な被害を受けたのです。

なんとなく、見当がつきますよね?

リーの姉ラシルは、遠い昔、その伝説の少女だったのかなって。

詩人が処刑されたあと、彼女は〈天の声〉を聞き、村人たちを東へと導くのですが、

当時、詩人とラシルは遠く離れて、互いの存在を知らないながら、

魂の深いところではつながっていたのかな、と感じています。

 

その2000年後、ルシタナの時代、ふたりは現実の世界で会います。

『石と星の夜』で、暗殺事件を追う諜報員パーセローが、

ひとめ惚れした宿屋の娘、サラの証言によって、たどりつく村がラシル。

(でも、サラは彼の追う容疑者に恋しているから、思い切り片思い。)

パーセローは、トゥーリー(黒のジョー。のちのリー)と協力して、

巨大な陰謀に立ち向かい、

それが縁で、サラとトゥーリーは会うことになるのですが、

書きながら、サラの前世は伝説の娘ラシルだったかも、と思っていました。

 

今回、薬草使いの少女として登場したラシルは、

茶畑を救ったときと同じ名前を授かり、やっぱり、自然を愛し、薬草を摘み、

あらたな時代に生きている、そんな感じがしています。

 

『石と星の夜』で彼女に恋したパーセローは、

不器用で、なかなか気持ちを打ち明けられなくて、書く方としては、

もう〜!って感じでした。

(諜報員としては、パーセローはよく動き、よくしゃべり、勘も鋭く、

本当に書きやすいキャラだったのですが、恋となると、てんでだめ。)

『ユリディケ』では、最初からもう少し楽しく出逢えて、恋ができると

いいなと思って、彼には、ルシナンの若き将校パーシー大尉役で

登場してもらいました。

同僚だったワイスとは今度も仲間。

そしてラシルには、やっぱりひとめ惚れ。


パーシーという名前は、『石と星の夜』を書く際、

パーセローという音が覚えにくいかな、と、代案として考えた名前です。

ひょろりと背が高く、明るい茶色の瞳で、金髪をしているのは、

パーセローのときと同じ。

ただし、違うところが一点。

前は、額の生え際が後退しかけて、髪が薄いのを気にしている若者だったので、

今回は、彼のあこがれだった、ふさふさの金髪にしました。

前回がんばってくれたもんね。それくらいご褒美がないとね。

 

ラシルとパーシーが、この先どうなるかは、わかりません。

ラシルは、村の薬草使いとして生きる決意をしているし、

彼の方の未来は(かなり長く蒼穹山麓にいるとしても、その後は)不確かです。

でも、わたしとしては、立場の違いや、さまざまな障害を乗り越えて、

うまくいくんじゃないかな、と思っています。

薬草使いの少年Part32022年10月08日 18:23

リーのことで、執筆中からずっとわからないことがあると書きました。

 それは、三粒のダイヤモンドを守ったのは、リーか?

あるいは、二千年前の幼いトゥーリーか? ということです。

 

リーは夢で、黒衣の男(かつてダイロスの師であったガリウス)が

フィーンのダイヤモンドに刃を入れる夢を見ます。

二千年前、ガリウスが、ダイヤモンドから光の剣を切り出す瞬間です。

夢の中のリーは、魂となって浮かんで、その様子を見ていますが、

ダイヤモンドの切り口から、涙のような雫がきらきらとこぼれ落ちたとき、

思わず身体がないのも忘れ、小さな手をさしのべます。

 

光の剣が切り出されたあと、

残りのダイヤモンドは光となって消えてしまいますが、

本当ならたくさん残っているはず。

それで王冠を造らせようとしていたダイロスは、怒り狂います。

どこに隠したかガリウスを問い詰め、家臣たちに工房を探させますが、

光となって消えたダイヤモンドは、当然見つかりません。

一方、密かにこぼれ落ちた三粒の雫は、小さな手の中で守られ、

その後、ガリウスに見いだされます。

 

二千年前、ガリウスがダイヤモンドから光の剣を切り出したのは、

最果ての国に住む男の子トゥーリーが、旅芸人にさらわれたすぐあとのこと。

小さなトゥーリーは二歳でした。

 雫を手にするシーンのイメージは、小さな男の子の、小さな手だったし、

トゥーリーの魂は、昔からガリウスともルシタナともゆかりが深かったから、

ダイヤモンドが切り出された瞬間、空間を超えて、

その雫を守ったのかなと思っていました。

ガリウスは、三粒のダイヤモンドを密かにブレスレットにして、

のちに、盗賊となったトゥーリーと地下牢で出逢ったとき、

彼に託して脱獄させます。)


そんなわけで、リーが姉のラシルに、その夢のことを打ち明けるとき、

彼はこんなふうにいいます。

「ぼくはまだ幼くて、小さな手のひらの上で、大きな雫が三粒、さざめくように

輝いていたよ」

 

でも、書いているうちに、もしかして、この男の子って、今のリーで、

時空を超えて、ダイヤモンドの雫を守り、ルシタナとユナを助けたのかな、

とも思えてきました。

時間はまっすぐに流れているわけじゃないというし、そういうこともあろうかと。

 

で、いまだにそれはわかりません。

時空を超えて、ふたりは同一人物だから、両方ってこともあるかもしれないし。

そこは、読む方それぞれの好きなように解釈してもらえたら、

一番いいかなと思っています。

 

ところで、今回、フィーンの船の中で登場する干し杏の入った焼き菓子ミンカ。

こちらは、リーが小さなトゥーリーだったとき、母親がいつも焼いてくれた

トゥーリーの大好物。

〈サラファーンの星〉では、その母親がミンカを焼いているあいだに、

庭に出たトゥーリーが、通りかかった旅芸人に連れ去られてしまいます。

トゥーリーにとっての、大切な味。

だからもう、二千年ののちも、そのお菓子に夢中になってしまいます。

今回も、その母親とリーは、いつかどこかで会えるに違いありません

薬草使いの少年Part22022年09月30日 13:47

今回は、リーのお話の二回目です。


二千年前。

リーが黒のジョーで、グルバダがダイロスだったころ、

大いなるダイヤモンドのほかにもうひとつ、

ダイロスが探し求めていたのがありました。

それは、紫の菫石(すみれいし)が中央にきらめく美しい額飾り。

その時代からさらに二千年さかのぼった古代アルディス王国で、

国王が花嫁に贈ったという伝説の額飾りです。

ダイロスはその国王。

黒のジョーは、竪琴を奏でながら、愛と平和を歌う詩人でした。

そして、王の侵略戦争を止めようとして、処刑されます。

ユナが夢で逢うリーの姿は、この愛の詩人アローディのイメージ。

〈サラファーンの星〉の第一部、竪琴を奏でて歌う若者の夢を

リーヴ(レアナ)が見るのですが、そのシーンと重ねました。

 

さて。愛の詩人だった前世など、とんと覚えていない黒のジョー。

盗賊仲間と、伝説の額飾りのありかを見つけたものの、

ダイロスの放った灰色の騎士の襲撃を受け、

仲間を全員殺された上、地下牢に入れられるはめに。

 

このときの盗賊仲間、ひょろりとした若者ジジは、

ジョージョーを思って描きました。

黒のジョーと仲間たちは、盗賊の親方から兄弟のように育てられ、

(ジョーはひとり生き残ったことで自分を責めていたけれど)

お互い会いたかったに違いありません。

『ユリディケ』の改稿は、彼らが自然な流れで会えるようにと

思いながら進めて、最後も、リーとジョージョーが、

しばらく一緒に過ごせたらいいな、と思いました。

ほかの仲間とも、いつか会えるといいな。

 

ところで、黒のジョーは幼いころ、旅芸人の一座にさらわれ、

その後、盗賊の親方にひろわれて、教育(?)を受けるので、

盗みの腕はピッカピカ。

リーとして生まれ変わっても、その腕は健在で、

迷宮跡に強制連行されたあと、大いに役に立つことになります。

そのことがわかるリーのセリフが、こちら。

(物語中には、入れるところがなくて、カットしました

 

「村にいたころ、旅の一座がやってきた。

実際は、旅芸人をよそおった盗賊団で、芝居とそのあとの宴のあいだ、

一座の裏方が密かにみんなの金品を盗んでまわった。

ぼくはそれに気づいて、反対に、一座の持ち物をくすねてまわり、

やつらが盗み出したものが入った麻袋の中身と入れ替えておいた。

やつらは二度と戻ってこなかったよ。

お祖母ちゃんはいった。わかっていておくびにも出さないとは、

手強い村だと思ったのだろうって。

たぶん村の人たちは、いまでも彼らを旅芸人の一座だと信じてる。

ぼくがしたことに気づいたのは、お祖母ちゃんだけだったから。

お祖母ちゃんはいったよ。おまえがあの一座についていったら、

将来さぞ優秀な座長になったに違いないって」

 

リーの大好きなお祖母ちゃん。

自然の中を歩き回ったり、家の外回りの仕事もするから

日焼けして魅力的なしわがたくさんあって、長い白髪をさらりとまとめて、

凛とした女性が、いつも頭に浮かんでいました。

(近いのが、ヴァネッサ・レッドグレイブのイメージ。

映画や舞台で主役を何度も演じ、アカデミー賞など受賞歴も華やかだけど、

『ディープ・インパクト』や『つぐない』の脇役も印象的です。)

広くやさしい心の持ち主ですが、主張すべきことはきちんという人物。

両親を早くになくしているリーたちには、唯一の肉親。

そんな祖母を目の前で兵士に殺され、リーは怒りのあまり、

兵士に立ち向かって、こめかみに深い傷を負います。

その後も、くっきり残ることになるその傷痕は、

黒のジョーのこめかみの傷痕と重ねました。

(ジョーは灰色の騎士に捕らえられたあと、壮絶な拷問を受けて

迷宮の地下牢に放り込まれ、こめかみに深い傷痕が残ります。)

 

本当は、〈サラファーンの星〉を完成させる前に、『ユリディケ』を改稿し、

もう一度、世に出したかったのですが、それはかないませんでした。

そうして〈サラファーン〉を書き終え、『ユリディケ』に戻ったとき、

あれほどフィーンのダイヤモンドに執着していたダイロスが

そう簡単に最期を迎えるはずはないこと、

また、ジョーが出てこないはずがないことに気づいたのでした。

もしもあのとき、『ユリディケ』の書き直しを先にしていたら、

リーという存在は生まれていなかったでしょう。

 

そのリーに関して、執筆当時から、いまだにわからないことがあります。

その話はまた、ゆっくり考えながら、書きますね。


まだ長時間パソコンを見ていると、あとから疲れが出て、

翌日寝込んだりしちゃいます。

そこで、体力を取り戻そう!と、散歩していたら、転んで足首を捻挫。

整形の先生に「しばらく運動厳禁ね」といわれてしまいました(TT)

でも、整形は母をリハビリに送迎している病院なので一石二鳥(?)だし、

その程度ですんで、よかったです。

薬草使いの少年Part12022年09月26日 23:22

更新が遅れてごめんなさい。調子を崩してしまい、だいぶ復活したところです。

で、今回は、リーのお話でしたね。

 

薬草使いの少年リーは、姉のラシルとともに、

『ユリディケ』の新バージョンにあらたに登場するキャラクターです。


ここでちょっと、前日譚〈サラファーンの星〉のお話を。

 

最初に『ユリディケ』を書き終えて、サラファーンに取り掛かったとき、

冒頭の詩「ユリディケの歌」を書いた詩人を、登場させたいと思いました。

『ユリディケ』では、その詩のほかは、

伝説の詩人として、物語中にちらっと名前が出てくるだけですが、

二千年前は、(詩人となる前に)

ルシタナとなにか縁があったに違いないという気がしたのです。


そうして生まれたのが、黒のジョー。

数奇な運命によって、大いなるダイヤモンドの欠片で作ったブレスレット

「星の雫」をルシタナに届けることになる盗賊でした。

(本当の名は、トゥーリー・ヨハンデリですが、幼いころにさらわれたので、

物語の終盤になるまで、そのことを知りません。)

 

で、今回、改稿するにあたって、考えました。

四部作全体の鍵を握るキャラクターが、

『ユリディケ』に全然出てこないってありえないよね、

二千年前の伝説の詩人として、冒頭の詩と名前だけは出いるけど、

そうじゃなくて、きっとまた生まれてきているよね、と。

 

では、それはいったいどんなキャラクターなのか?

そんなことを思っていたある日、

薬草使いの少年と少女の姿が見えました。

少年は黒い巻毛。盗賊は巻毛ではなかったけれど、瞳は同じ濃い鳶色。

あ、この子だ!

リーという名前も浮かびました。

おそらく、正式にはトゥーリー。(家族から、愛称のリーで呼ばれるうちに

誰もトゥーリーと呼ばなくなったんじゃないかな。)

 

少女は姉。ふたりがいるのは、ダイロスの迷宮跡。

ユナが灰色の騎士に連れ去られるギルフォスの宮殿です。

この姉弟も、ドロテ軍に強制連行された身だという気がしました。

 

登場人物には、自分からいろいろ教えてくれるキャラがいます。

リーもそのひとり。

言葉の遅い子どもで(前世のトゥーリーもそうだった)、

村人からは、ちょっと頭の弱い子だと思われていて、

姉のラシルはしっかり者。

ふたりが宮殿に連行される前の平和な暮らしが次々と見えました。

蒼穹山麓の石工の村で、薬草使いの祖母を手伝って暮らす様子や、

その祖母が、夜ごと炉端でルシタナの伝説を聞かせているシーン、

その平和な村に、ドロテ兵がやってきて、

石工たちとともに、リーと姉を連行するシーンなどなど。

 

前世で迷宮の地下牢から脱出した彼にとって、そこは一度はいたところ。

もちろん、そんなことは覚えていないけれど、

リーは、宮殿の薬草使いとして、一見、従順に働きながら、

密かに、宮殿の中や地下の洞窟を探ります。

それがすべて、ユナを助けることにつながっていくんだとわかりました。


ただ、最初からすべてが見えるわけではありません。

姉弟のキャラクターはわかってきたけど、この先、

 11歳のリーと14歳のラシルが、ドロテ軍の大人たちの中で、

どうやってユナを助けるのか?

リーはとにかく前向きで、決してあきらめないタイプ。

でも、 姉のラシルは心配でなりません。わたしも不安でした。

だいじょうぶかなぁ…。


それでも、リーを信じて、まずは、

リーとユナが時をこえた絆で結ばれていることを暗示する

ユナの夢のシーンを入れました。

 

また近いうちに、Part2を書きますね。


ところで、ものすごい台風が立て続けに来ました。名古屋も風がすごかった…。

被害に合われた地域の一日も早い復旧を祈っています。

亡くなられた方もいて、胸が痛みます。温暖化の影響や、盛土の問題。

どうやって、未来を守るか? 真剣に考え続けていきたいです。

エピローグ裏話Part32022年09月08日 17:07

泥棒の少年ジョージョーは、旧バージョンでは、旅の仲間として、
一緒にウォルダナに戻ってきていました。
そして、クレナまで来て初めて、どこにも行くあてがないことを打ち明けます。
第一部で、水車小屋のパスターさんが、若い働き手を探していて、
ヒューディに声をかけ、断られてしまうというくだりを入れていたので、
ヒューディがそのことを思い出すという展開です。
ジョージョーはきっとよい働き手となり、セイルのよきお兄さんになったでしょう。

ただ、改稿をすすめていくと、
雨降りの呪文をジョージョーに教えた「ひいおばあちゃん」は、
もしかして、ウォルダナに渡ってきた生粋のテタイア人だったんじゃないか、
という気がしてきたし(ちょっとクレイジーでワイルドなイメージ)、
ジョージョーの料理の才能も「発覚」し、
なんとなく、彼の未来のイメージが、旧作と違うような気がしてきました。
そして、セティ・ロルダの館で、料理人として活躍していたことを思い出し、
あ、そうか、となったわけです。
エレタナと、すごく仲良くなれる気がするし、ユナとも時々会えるだろうし。

そして、今回は、(決してジョージョーの代打ではないんだけど)
ヨルセイスが、ユナやルドウィンと一緒にクレナまでやってきます。
彼は、サラファーンの四部作でも最果ての国に渡っていたので、
本人も相当来たがっていたので、素直にそうしてもらいました。
(今後、親善大使として、ウォルダナで過ごす時期もあると思います。)
もうひとり、ユリス王子も来たがっていたけれど、あまり人数が増えるとややこしく
なるので、こちらは遠慮してもらいました。(ごめんね、ユリス)
彼も、親善大使として、近いうちに、人の世界に渡ると思います。

旧バージョンでは、第一章に、レアナの生徒として出てきた幼いハモン少年が、
ちょっと成長した姿で登場しています。
新学期の初日、という設定だったので、新入生として妹が入ってきて、
レアナにりんごを差し出すんですけれど、はずかしくて何もいえません。
そのとき、ハモン少年が、お兄ちゃんとして、
「ちょっと早いけど、うちのりんごはおいしいんです」とフォローします。
ハモン兄妹の家は、林檎園なんです。
このシーンは、新バージョンではカット。(ごめんね、ハモン)
ハモン一家が林檎園、という設定は、四部作を書く際に引き継ぎました。
林檎園と水車小屋とがある村のイメージは、外せないかな、と。

エピローグのお話は今回でおしまいで、
次回は、薬草使いのラシルとリー(あるいは片方ずつ)のエピソードの予定です。
病気して以来、体力もめっきり落ち、以前のエネルギーがいつ戻るか不安ですが、
まずはこうして、のんびりブログを綴っていこうと思っています。
(舞台裏の話はいくらでもあるので、つい色々と書いてしまって…^^;
楽しんでいただけますように。)

エピローグ裏話Part22022年09月03日 13:36

『ユリディケ』旧バージョンのエピローグでは、レアナの生徒のひとりが、

戦争で行方不明になっていた兄が戻ってきた!と伝えるシーンがあります。

彼はピアノが上手で、重傷を負って捕虜となり、片目を失っていました。

名前はジェナス。

胸を痛める妹に、もう片方の目を失ってもピアノは弾けると笑う健気な少年で、

音楽院への進学が決まっています。


〈サラファーンの星〉では、ジョサという名で主役のひとりとして登場。

今回は、ユリディケでも、わかりやすく同じ名前で出てもらいました。

音楽院への進学が決まっている、というところはそのままに、

重傷を負ったなんていう悲惨な話はなしで(2千年前、充分辛い目に遭ってる)

レアナとヒューディとの再会を予感させる展開にしました。

四部作では、ヒューディが、ジョサと気持ちを通わせられないまま、

別れてしまって、彼の心残りになっていたので、

今回は最初から幸せに出逢ってほしい。そんな思いを込めました。


犬のチェスターは、旧バージョンのエピローグでは、白いふわふわの子犬で、

レアナの生徒が家からこっそり学校に連れてきています。

名前も出てきませんが、四部作を書くときに、どうしてもこの子が気になって、

ヒロインのリーヴ(レアナ)と一緒にいる薄茶色の犬のイメージが浮かび

彼女の犬になりました。

『星の羅針盤』のプロローグ、第一ページ目から登場します。

(白い子犬ものちに登場。こちらは、両親の知人に起こったとある事件から

生まれたキャラです。)

 

ルドウィンとチェスターの関係も、改稿版エピローグの密かなポイントです。

四部作では、ルドウィンとレアナは兄と妹で、チェスターはルドウィンのことも

大好き。

彼が帰省するたびに、大喜びで飛びつきます。

そのときの、ルドウィン(ウィルナー)の決り文句が、

「やあ、チェスター。元気だったかい?」

なので、今回もルドウィンに、「やあ、チェスター」は言わせたく、

「チェスター!」と名前を呼ぶレアナのセリフを、その前に入れました。


ただ、そうでなくとも、ルドウィンは、

2千年前の愛犬を思い出していたんじゃないかな

今回彼は、エレドゥ峡谷で九死に一生を得たあと、暗黒の洞窟を旅しています。

それは、暗くて狭い産道を通ってふたたび生まれるような体験でもあり、

そのあいだに、過去のことをいろいろ思い出しただろう気がするのです。

そう考えると、チェスターのことも、なんとなく思い出しているのかなって。


一方のチェスターは、もちろん彼を覚えています。

犬は人間よりずっと鋭いですからね(と、犬好きのわたしは思っています)。


ルドウィンとチェスターにとって、これが待ち望んだ再会であることは、

ユナには全然わからなくて、チェスターの喜びようがなんだか微笑ましく、

「まるであなたの犬みたい」と笑うのだけど、

ヨルセイスはわかっているので、温かく見守っています。

(彼の視点を入れるとうるさくなるので、書いてないけど、きっとそう。)


ヒューディが旅の途上で見出した馬のアンバーは、2千年前の彼の愛馬です。

レアナにとっても、大切でなつかしい馬なのですが、

エピローグに書いている範囲では、ヒューディとの再会に胸がいっぱいなので

アンバーに気づくのは、ずっとあとかな…。

アンバーも、恋人たちに気を利かせて、近くで草をはんでいます。


大型の台風が北上しています。

皆さまどうぞくれぐれも気をつけてお過ごしくださいね。

『ユリディケ』エピローグ裏話Part12022年08月30日 17:01

裏話となると、四部作を含めて、スポイラーになってしまう箇所もありますが、
エピローグに関しては、それほど気にならない部分かなと思っています。
(注:これは作者の独断で、あまり当てにはなりません。
というのも、わたしは、映画でもメイキングとか見たあとで本編を観て
あ、これはあんなふうに撮ったシーンだ!と思うんだけど、たとえば、妹などは、
絶対になにも知らないで観たり読んだりしたいそうで、わたしが少しでも
話そうとすると、「あ〜〜! 言っちゃだめ〜〜!!」と耳をふさぎます。)

さて。まずは、エピローグの新バージョンと旧バージョンについてですが、
新旧ともに、第一章と呼応させている構成は、同じです。
舞台はユナの故郷クレナで、レアナのシーンで始まり、ユナの帰還で終わります。
最後、ユナが風に吹かれて、世界との一体感を感じているところも、まったく同じ。
このシーンは、昔、最初に『ユリディケ』のアイデアが浮かんだときから
はっきりと映像が見えていたので、変えられない部分でした。
(派手さは全然ないんですけど。)

そのほかの部分は、ほとんど変わりました。
〈サラファーンの星〉四部作を書いたあとでは、このエピローグが
すべてのエンディングともなるわけで、
(もっと大きな意味では、おそらく、40章からエピローグまでを
エンディングと呼ぶべきかもしれませんが)
やっぱり、四部作で切ない別れをした友だちとは、めぐり逢わないとね!
というわけで、
復活してほしいと願っていたキャラクターを登場させました。
『ユリディケ』は、2千年前の世界の終わりを乗り越えた、
あらたな希望の物語だから。

そこで、四部作を読んでいる人には、そうだとピンとくるように、
また、今作だけ読んだ人には、とってつけたようにならないように描くよう
心がけました。
(そうなってるといいのですが……。とにかく、そんなわけで、
エピローグは早くから取りかかり、何度も書き直していました。その過程で、
バドとディーンは、第4章から名前だけさりげなく入れてみました。)

ピンと来てもらうにはどうするか?
最も単純な方法として、四部作と同じ名前にしました。
主役たちは、ユナ(=ルシタナ)やレアナ(=リーヴ)ルド(ウィルナー)
など、名前がほとんど変わっているのですけれど、
エピローグは短く、想像がしづらいという問題があります。

なので、バドはバド。シャスタはシャスタ。ジョサはジョサ。
ディーン先生はディーン先生。
そして、犬のチェスターはチェスターです♡

バドとシャスタは、2千年前、ヒューディとレアナの親友でした。
バドは通信兵として、シャスタは看護師として戦場に行き、
レアナたちとの再会を願っていたのに、叶いませんでした。
それがとても切なくて、『ユリディケ』の改稿の際には、
絶対に会えるように、と決めていました。

バドとシャスタの外見も、わかりやすく、前と同じにしました。別に
同じにしなくてもいいんだけど、まずは、この二人が出逢ったときに、
お互いにわかりやすいほうがいいし。
どちらも熱い人たちだから、お互いを見つける前に、
うっかりほかの人に恋しちゃってもいけないしね。

いざ書いてみると、バドは思いのほか、うっかり者ではありませんでした。
明るいし、やさしいし、面白くて、人気あるだろうし、
付き合った女の子はいただろうけど、家につれて来て紹介するほどの彼女は
いなかった。レアナが、バドが友だちのことを話すのを聞いて、
男友だちだと勘違いするほどに。
心配することはなかったなぁ。

四部作では、みんなのお気に入りのお店が出てくるんだけど、
(バドとシャスタが最初に出逢う場所でもあります)
そこの「ファゼ」というデザートはシャスタのお薦めです。
(ファゼって、『ユリディケ』一番の食いしん坊の名前に似てますね。)
リーヴ(レアナ)との別れの日にもシャスタと二人でオーダーする
そのなつかしのデザートのことも、新エピローグに、ちらっと入れました。
(どんなデザート?と思われたら、公式サイトのWorldページの
自然と暮らし〉コーナー食べ物のとこをチェックしてみてくださいね。
こちらから飛べます。)
↓↓

バドの父、ディーン先生も、四部作で非業の死を遂げてしまったので
どうしてもまた会いたくて、登場してもらいました。
実際に出てくるシーンはなくて、会話の中だけですけれど。
奥さんは、もちろん最愛のエリーです。
バドとシャスタは、かつて、戦場でいろいろと悲惨な経験をしたと思うんです。
今回、二人が医師の道を選んだのは、そんなことがあったからかもしれません。

ジョサやチェスターのことなど、また次回、裏話Part2に書きますね。

私事ですが、家族の一番の懸案事項が、頼れる相談員さんのおかげで解決しました。
本当に、彼女をはじめ、たくさんの人に感謝の気持ちでいっぱいです。
まだ妹の病気や自分自身の心身の問題などありますが、よき精神科の先生のもと、
通院を続けて、看護師さんの訪問看護も受けながら、
少しずつ、元気を取り戻していこう思っています。