戦争と平和と核と〜アカデミー賞に思う2024年03月17日 22:10

先日行われた第96回アカデミー賞授賞式で、日本の二作品がオスカーを受賞しました。
おめでとうございます!
長編アニメ賞の『君たちはどう生きるか』視覚効果賞の『ゴジラ−1.0』を含めて、
『オッペンハイマー』『関心領域』『実録 マウリポリの20日間』といった
戦争と平和、核の問題を考えさせられる作品が多く受賞したのは、今の世界情勢と、
それに対する人々の祈りが反映されていると言えるのではないでしょうか。

『ゴジラ−1.0』の山崎監督が、受賞後のインタビューで語っていました。
「ゴジラというのは戦争の象徴であったり、核兵器の象徴であるゴジラを
なんとか鎮める話だと思うんですけど、その鎮めるという感覚を世界が今欲しているの
ではないかな、それがゴジラのヒットの一部につながったのではないかと思います」

『実録マリウポリの20日間』の長編ドキュメンタリー映画賞は、ウクライナ映画として
初めてのオスカーだそうです。
チェルノフ監督は、そのことを光栄に思うと話したあとで、自分は、この壇上で、
この映画を作ることがなければよかったと言う初めての監督だろうと続け、
この賞をロシアのウクライナ侵攻と引き換えにできたなら……と、切実な思いを
静かな口調で吐露していて、胸がつまりました。

国際長編映画賞の『関心領域』も、深く考えさせられる作品です。
ホロコーストが行われているアウシュビッツ強制収容所の隣で平穏に暮らす一家を描く
静かな(そして、心理的にとても怖い)反戦映画。
受賞スピーチでは、去年のハマスによるイスラエルの奇襲や、その後のイスラエルによる
ガザへの報復に触れ、我々はどうやって抵抗すべきか?と問いかけ、
出演した女優さんが席で拍手をしながら涙を流す姿が見られました。

作品賞、監督賞を含め、最多七部門に輝いたのは『オッペンハイマー』。
主演男優賞のキリアン・マーフィは、スピーチの最後をこう締めくくっていました。
「この映画は原爆を作った人の話です。わたしたちは今も彼の世界に生きています。
この賞を、世界中のピースメイカー(平和を求めて努力する人、
平和をもたらそうと仲裁する人)に捧げます」
彼はアイルランド人。作品によって様々な顔を見せてくれる俳優さんですが、中でも
祖国の独立とその後の内戦を描いた『麦の穂をゆらす風』の演技が心に残っています。
そんな背景もあって、平和への思いは、とても強いのではないかと思います。

授賞式の翌日、クローズアップ現代で、ノーラン監督のインタビューを見ましたが
(オスカーを受賞する前にハリウッドで行われたインタビューです。)
10代の息子さんに映画の内容を話したとき、自分たちの世代は、核の脅威よりも
気候危機の方が差し迫った問題だ、というようなことを言われ、ショックを受けたと
語っていました。
その後、時計の針を逆に回したように、核の脅威が高まっています。
映画は、原爆の父と呼ばれる理論物理学者オッペンハイマーの視点で描かれており、
広島と長崎の惨状は画面に登場しないそうですが、
それでも、世界を破滅させる恐ろしいものを生み出してしまった、という
オッペンハイマーの苦悩、ジレンマは、映画紹介の画面から伝わってきました。

サラファーンの星四部作に登場する〈氷河〉は、核兵器のメタファーとして描いたこと、
『ユリディケ』を書いた時代、「地球温暖化」が叫ばれ始め、それも意識して描いたことは
このブログでも何度か書いていますし、本のあとがきにも書いた気がします。
そんな恐ろしい兵器を生み出した人物の心は、いったいどのようなもの
だったのか、物語を書き進めながら掘り下げ、体験していきました。
人物のバックグラウンドも、開発のきっかけも、世界も全く違いますが、
天才的な科学者が抱えるジレンマは、オッペンハイマーと重なるのではと感じています。

アカデミー賞授賞式を見たのは、たぶん、十数年ぶりです。諸々の事情で、
そんな余裕もなかったけれど、今回、気合を入れてWOWOWを入れ、久しぶりに見て、
自分がどれほど映画が好きだったかあらためて思い出しました。
物語を紡ぐようになったのも、幼い日、映画に恋したことから始まったのです。
4部門で受賞した『哀れなるものたち』も、とても好きな本、メアリー・シェリーの
『フランケンシュタイン』が下敷きになっているそうで、気になっています。
少し所用が重なり忙しい日々が続きますが、なんとかいろんな作品に足を運びたいです。

映画『スターダスト』で当たったノート2023年11月19日 19:50


stardustのノート

2007年公開の『スターダスト』。
ニール・ゲイマン原作、クレア・デインズとチャーリー・コックス主演で、ロバート・デ・ニーロが空飛ぶ海賊、ミッシェル・ファイファーが魔女、ピーター・オトゥールが王様という豪華キャストの、楽しく素敵な(そして、ちょっとおかしな)ファンタジー映画です。
それほど話題にはならなかったけど、ヒロインのクレア・デインズが地上に落ちた流れ星で、
なんだかチャーミングで、星の大好きな私にとって、タイトルも魅力的でした。

その映画の話はまた別の機会にするとして、こちらはそのノベルティグッズ。A5版ノート。
雑誌かなにかで、”10名様にプレゼント”という抽選があり、ダメ元で応募したら、
ある日、ポストに届いていました。
(あまり応募する人がなかったのか、あるいは、星だ〜☆♡という熱い思いが通じたのかな
バックスキンのように加工した布製の表紙、中の紙はオフホワイトで古風な風合い、閉じると
ベルベット風のリボンで結べるようになっています。
もったいなくて、長らく使えなかったけど、サラファーンの星を書き上げ、Websiteを作る際
そのメモに使い始めました。↓こんなふうに。

メモ

今は、『ユリディケ』を紙の本にしようと、そのアイデアやメモに使っています。
(昨日、朝食を作っていて指を火傷し、キイボードを打つのにちょっと苦労しています。
みなさんも、フライパンの扱いには気をつけてくださいね!)

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル2023年08月06日 13:50


インディのパンフ

インディアナ・ジョーンズが帰ってきました!
学生時代に第1作を観てから40年。
最初、5作目ができると知った時には冗談かと思いました。
ハリソン、御年79歳。(いまは誕生日が来て80歳!)できるのかな?と。
けど、冗談じゃなかったんですね。

1作目から観ていたファンとしては、これだけは大画面で観ないと!というわけで、
調子を崩してから一年半行けていなかった映画館に、気合入れて行ってきました。
パンフレットもゲット。表紙がとってもクールで感動(上の写真です)。
中身もぎゅっと詰まっていて、読み応えもたっぷり。最近は世界同時公開で
観てから作れないこともあり、中身のないパンフレットも多々見受けられますが、
これは力が入ってました。シリーズを知らない人のために、それぞれを見開きでまとめて
あるし、コンセプトアートやインディのパスポートの写真まで載ってます。

4作目はいまひとつだったけど、最後を飾る今作は、役者と制作者の思いのこもった
まさにファンのための映画といえる作品で、一作だけでも家族で楽しめる映画ですが、
シリーズを知っていると楽しみが増す心憎い仕掛けが随所にちりばめられています。

1作目と3作目がナチスドイツが敵役の第二次大戦を背景にしたもの(2作目は1作目の
前の年にさかのぼる)。4作目は1950年代の冷戦下(別れた恋人マリオンとのあいだに
息子がいた!という設定)。
今作『運命のダイヤル』では、インディは大学教授を退職します。
時は1969年。
アポロ11号が人類初の月面着陸を成功させ、ちょうど教授の座を退く日に、ニューヨークで
凱旋パレードが行われます。ベトナム戦争真っ只中で、若者たちは反戦デモで抗議をし、
ロックンロールに夢中です。
インディのアパートメントの下の階から聞こえる音楽は「マジカル・ミステリー・ツアー」。
ヒッピーの若者が大音響でレコードをかけているのですが、タイトルが、
これから起こるインディの旅を思わせます。

お決まりの小道具は、今回も大活躍。トレードマークの帽子と鞭ももちろん登場。
帽子はお守りのようなもの。この帽子の由来は、3作目『最後の聖戦』で描かれています。
このとき少年時代のインディを演じたのがリヴァー・フェニックス。
インディのパパをショーン・コネリーが演じて豪華でした。ふたりとも、残念ながら
もうこの世の人ではないけれど、1作目にエジプトで発掘を手伝い、
3作目にも登場したサラーは、ニューヨークに一家で移民し、今作でも登場します。
嬉しい再会。(ジョン・リス=デイヴィス。「ロード・オブ・ザ・リング」のギムリです。)
いつものお約束の地図ーーインディが場所を移動すると、その軌跡を矢印でたどる
古風な地図と古風な演出もそのままだし
インディが馬で駆けるシーンも登場(NYの街と地下鉄構内&線路!)、
インディが大の苦手とするヘビは、ちょっと形を変え、オオウナギとして登場。

今回のヒロイン(インディの親友の娘で、インディが名付け親)の相棒は、もとスリ。
2作目『魔宮の伝説』でインディがスリの少年を、大切な仲間にするくだりを思わせます。
『魔宮の伝説』のショーティ(キー・ホイ・クアン)は、今年度のアカデミー助演男優賞を
『エブリシング・エブリウェアー・オール・アット・ワンス』で受賞したんですね。
(街を歩いていると『エブリシング〜』に出てた人だねといわれるそうですが、いまだに
『インディ』に出てたショーティだね?とも声をかけられるそうです!)

インディ映画のオープニングには、毎回、物語の発端となるエピソードが出てきます。
学生のころ映画館で、『レイダース 失われたアーク』の予告編で大きな岩がごろごろと
ハリソンを追いかけてくる予告編をみたときの強烈な印象は、今も鮮明に覚えています。

今回は、第二次世界大戦さなかの1944年、ナチスの手から考古学の貴重な発掘品を
インディが取り戻そうとするエピソードが描かれますが、そのシーンのハリソンの若いこと!
25年の歳月をどうやって若返らせたのか不思議でしたが、パンフレットを読んでびっくり。
ルーカスフィルムが保有する40年前に撮影したインディと『スター・ウォーズ』のフィルム
(映画には使われなかったものも含めて数百時間分)を検索し、画角や明るさなどが
一致するショットを発見できる技術を使ったそうです。
今回ハリソンは実際にそのシーンを演じ、それに過去のフィルムの顔をあてはめる作業です。
セリフもハリソンが話していて、若い頃と比べて、いまは声のトーンが低くなっているから、トーンを高くするよう心がけたそうです。
みていて全然違和感がなかったので、舞台裏を知って、本当に驚きました。

アントニオ・バンデラスがインディの親友役で出ていたのも嬉しいサプライズでした。
彼、『デスペラード』や『マスク・オブ・ゾロ』での、南欧の濃い色男というイメージが
あったのですが、すごくいい感じに歳を重ねていて、パンフレットをみるまで、彼だと
気づきませんでした。渋かったなぁ〜。こんなふうに成長できる俳優さんって素敵です。

『運命のダイヤル』(the Dial of Destiny)というタイトルだからこその演出もありました。
これはさほどネタバレってことにならないんじゃないかな(注:一番最後に、ネタバレかな、
と思うことーーこの映画の大好きなシーンのことをひとつ書くから、これから観ようと
思っている人は、そこはスルーしてくださいね)。
インディとヘレナ(ヒロイン)が洞窟に入って、「音が一番響くところ」を探すシーン。
なにか歌って試そうと、ふたりがともに口ずさんだのが、ベートーベンの『運命』。
「ババババーン! ババババーン♪」
(ベートーベンの交響曲、英語でもDestinyってタイトルです。)私の頭では『運命』の冒頭は
ダダダダーン!なんだけど、母に話したら、「私はババババーンよ」と。そうなんかなぁ。

スピルバーグとルーカスがタッグを組んで生み出した、ある考古学者の冒険物語。
今回スピルバーグとルーカスは製作総指揮で、監督はジェームズ・マンゴールド(インディの
世界観をしっかり受け継いでいます)。『3時10分、決断のとき』や『ナイト&デイ』
『フォードVSフェラーリ』など、私も大好きな作品の監督さんです。
音楽はもちろん、ジョン・ウィリアムズです。こちらは御年90歳!

『スター・ウォーズ』を見たときからハリソンのファンですが、『スター・ウォーズ』も、
もう作らないのかなってあきらめていたら、しっかりハリソン出演でシリーズが完成したし
(でも、ちょっとハン・ソロの運命には納得できない…)、インディの壮大な物語が
素敵なエンディングを迎えて、とてもうれしいです。
インディの長年の旅路には、ほろ苦い面もたくさんあります。
前作に出ていた息子が出てこないな、と思っていたら、ベトナム戦争に出征していたり、
教授としての人生を華々しく終えたわけではなかったし(引退のシーンもささやかです)、
妻とは離婚協議中で別居している、一人暮らし。
そんなふうに始まるところも、なんだかよかったなと思います。最近のアクション映画に
よくあるように、これでもか!と激しいシーンが続く、ということはなく、
ちょっと静かなシーンもあって、そういうところでは、オールドファッション人間としては
ひと息つけて、ほっとします。

文面からすぐにわかると思いますが、この映画だけではなく、ハリソンのファンです。
(とはいえ、映画三昧できた若い気軽な身分の頃、彼の映画は片っ端から観ていましたが、
その後はそうでもないので、それほど忠実なファンとはいえないかもしれませんが。)
で、映画三昧していた当時、『ママはシングル』という小説を書き、ママハリソンの
大ファンにしました。自分のことは(周りの人も)小説のモデルにはしませんが、
ハリソンのファンで広告代理店勤め、ということは、キャラクター設定に使いました。
寝坊して起きないママに、娘が、「ハリソンがテレビに出てる!」と嘘をつき、
「え? どこどこ?」とママが起きてくる、というシーンに。
(当時の私も絶対そう言われたら飛び起きてます。)

インディは考古学的に貴重な品を探しているけれど、彼の精神はつねに(本人はおそらく
意識していない)世界の真の平和のために、そして、ささやかな日常のために、
命を張っています。(そして、その活躍は、世間には知られていません。)
今日は広島に原爆が投下された日。地球に生きる人間として、忘れてはならない日です。
核を使われる危険が、これまでになく現実味を帯びて感じられる今、わたしたちは、
核兵器は抑止力にはなりえないと悟り、未来の世代に少しでも良い世界を手渡さなければ。
その思いを新たにしながら、犠牲になった方々のご冥福を祈り、平和への祈りを捧げます。

☆    ☆    ☆

最後に。『運命のダイヤル』で、お洒落で素敵だなって、心が温かくなったのが、
マリオンとのシーン。(ネタバレ注意)

『レイダース 失われた聖櫃(アーク)』での、有名なキスシーンの再現です。
同じセリフを使っていて、ぐっと来ました。やっぱり、こうでなくちゃ!
そして、世界は「争い」ではなく「愛」でできていると信じたいです。

坂本龍一さんを偲んで2023年05月03日 22:30


午後の水晶のような月

憲法記念日の夕方。5時半過ぎに近所に買い物に行くと、まだ明るい東の空に
月がぽっかり浮かんでいました。満月が近くなって月の出が少しずつ遅くなっています。
青空にこんなふうに水晶のように透ける月も、とても好きです。
(月は画面中央です。クリック拡大で、模様もなんとなく見えるといいな。

坂本龍一さんの訃報に接してひと月が過ぎました。
反戦と脱原発を訴え、環境問題も真剣に向きあっていた「教授」。
今も空の上から、憲法9条を守りたいと願っているに違いありません。

フィギュアスケーターの三原舞依さんが、先月の国別対抗戦で、シーズン締めくくりとなる
『戦場のメリークリスマス』を滑っていた姿が思い出されます。
彼女の天上的な舞には、坂本さんへの心からの追悼が込められていました。
映画公開当時、彼の音楽も、デヴィッド・ボウイという同じく世界的な音楽家との共演も、
楽しみだったのを思い出します。
戦争のむなしさを描き、強く平和を願う作品で、美しいピアノ曲が、観終わったあとも
ずっと心に響いていました。

東日本大震災から12年になるこの春、坂本さんは新聞に(我が家の場合は中日新聞)
原発に反対するメッセージを寄せていて、切り抜いてデスクに置いていたのですが、
そのすぐあとに亡くなられてしまい、大きな衝撃を受けました……。
そのメッセージのなかで、坂本さんは、
「なぜこの国を運営する人たちはこれほどまでに原発に固執するのだろう」と
疑問を投げかけています。
放射性廃棄物の処理の仕方も未解決で増える一方だし、2011年の原発事故の汚染水、
処理水も増える一方。世界一の地震国だというのに、なぜだろう、と。
本当に、わたしも不思議でなりません。

東日本大震災の原発事故を受けて、ドイツは、当時のメルケル政権が脱原発を決断しました。
そして、ロシアのウクライナ侵攻という逆風のなか(実際、反対意見も増えつつあるなか)、
先月、脱原発を完了しました。
痛みをともなっても、未来をしっかり見つめ、賢明な決断を下した勇気に敬服します。

なのに、事故当時国のこの国は、まったく逆方向へと動いていて、悲しくなります。
そして、二度と戦争をしないと誓った憲法9条を変えようとしていることも悲しいです。
水晶のような澄んだ月を見上げ、坂本さんを偲びながら、
日本が平和への道をしっかりと歩み、未来を築く若い人たちが、ひとりでも多く
の遺志を受け継いでいってほしいと願いました。

ジブリパーク開園〜中日新聞のジャケット2022年11月01日 18:07


ジブリパーク開園日の地元新聞のジャケット

ジブリパークがオープンしました。
2005年に「愛・地球博」が行われた広大な敷地の中につくられ、自然との調和を
考えて森を大切にしながら、整備が進められていったそうです。
今朝の地元紙、中日新聞の表紙がとっても可愛かったので、アップしますね。
(この中に、普通の新聞が入っています。ジブリ特集もたっぷり。やるなぁ、
中日新聞! 地元だから、なんだか嬉しい♡)

「愛・地球博」の開催が決まったとき、海上の森(かいしょのもり)の自然が
破壊されてしまうと反対運動が起こったことを覚えています。
オオタカの巣が見つかったこともあり、海上の森を守る方向で、地球博の計画は
大幅に変更され、その後年月がたっても(植樹などの努力もあり)豊かな自然が
残されています。

「愛・地球博」には行きましたが、本当に会場は広く、緑がいっぱいでした。
ジブリパークは、子どもたちが自然の中で遊べるようにとの願いが込められている
そうです。
幼い頃から自然とともに生きていけたら、また、さまざまな違いを自然に
受け入れて生きていけたら、世の中、戦争なんて起きないに違いありません。

ジブリ映画は全部見たわけではないけれど、とくに、『となりのトトロ』と
『千と千尋の神隠し』が好きです。

男はつらいよ お帰り寅さん〜渥美清さんの思い出2020年02月23日 16:17

こどものころ、お正月には必ず家族で映画を見に行きました。
寅さんと007。
どちらも、お正月には必ず新作が公開される人気映画でした。
いつもはまったく笑わない父が、寅さんを観ると大笑いしていましたっけ。

今年のお正月、久しぶりに寅さんの「新作」を母と観に行って、そんなことを
思い出していました。

東京で働いていたとき、渥美清さんを見かけたことも、思い出しました。
たしか、大学を出てほどないころ。
残業のあと、同期の友だちと三人で、会社から歩いて5分の帝国ホテルに寄って
一階のレストランで食事をしていたときのことです。
(映画大好きなわたしは、いつも仕事のあと日比谷の映画館に行くのに
ホテルの中を通って近道していたので、時々、お礼(お詫び?)に、
安月給でも手が届く一階のカジュアルレストランで、パンケーキなどを食べていたのです。)
隣の席に渥美さんが入ってきました。

「あ、寅さん」友だちが、小さな声でいいました。
渥美さんは、ちらっとこちらを見て、わたしたちは、思わず黙礼し、
渥美さんも、そっと黙礼を返してくれて、それから椅子に座りました。
シャーロック・ホームズみたいな鳥打帽をかぶって、さりげなくおしゃれな
スーツ姿でした。
小学校高学年ぐらいの男の子を連れています。
甥御さんかな、と思いました。
(寅さんに甥の満男が出てくるから、勝手にそう思ったのですが。)

映画の寅さんと全然違って、本当に物静かで紳士でした。男の子もそうでした。
ふたりのあいだには温かな空気が流れていて、なんだか素敵でした。
渥美さんは、人間として、とても温かで、おだやかな方で、周りへの心配りも
細やかなんだろうなと感じました。

映画の中の寅さんは、ちょっとおっちょこちょいで、早とちりで、
常識はずれなところもあって、家族に迷惑をかけたりするけれど、
渥美さんはそんなことはなさそうです。
でも、寅さんは、困っている人がいると放っておけません(特に相手が美女ならば)。
本当に心の芯が温かいのです。
その温かさは、渥美清さんの人柄と重なっているのだと思いました。

「お帰り寅さん」の主人公は、甥の満男です。
作家として独り立ちしていますが、妻をなくして、娘と二人暮らし。
そんなとき、高校時代の恋人に再会して…。というお話です。

恋に仕事に悩む満男が思い出すのが、かつて、寅さんに
人間て、なんのために生きているのかなと問いかけたとき、寅さんが、
おまえ、難しいこと聞くなあといって少し考え、
こたえた言葉が、心にしみます。

「なんというかなあ、ああ、生まれてきてよかった。そう思うことが、
何べんかあるだろう? そのために人間、生きてんじゃねえのか」

「お帰り寅さん」も、とても心にしみる映画でした。

寅さんの主題歌も大好きで、わたしは、ふとした拍子によく歌います。
楽しいときや辛いとき、嬉しいときや悲しいとき、なんでもないときに。
(要は、いつでも。)
今回は、びっくりすることに、オープニングで桑田くんが歌っていましたね。
でも、一番好きな3番は、渥美清さんがエンドクレジットで歌って
締めています。

どうせおいらはヤクザな兄貴
わかっちゃいるんだ妹よ
いつかお前が喜ぶような 偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙の陽が落ちる 陽が落ちる
(作詞 星野哲郎)

子どものころ、奮闘努力の「ふんとう」が「うんと」に聞こえて
ずっと「うんと〜努力の甲斐もなく」と歌っていました。
てっきり、たくさん努力しても、その甲斐がないんだなぁと思って。
奮闘努力だということは、大人になって知りました。

今日は父の命日。
ニュージーランドで大きな地震があった翌日のことで、肺炎での急逝でした。
知人がお参りに来てくれたり、お供えを送ってくれたり…。
もう9年になるのに、寅さんのように温かな人たちで、胸がいっぱいになります。
天皇誕生日でもありますが、
コロナウイルスによる新型肺炎の感染拡大の影響で、一般参賀が中止になりました。
感染拡大が収束して、ウイルスの流行が一日も早く終息しますように、
ワクチンができますよう、感染した方がしっかり回復され、
全快されますようにと祈っています。

スター・ウォーズⅨ〜フォースの守りよ永遠に2020年01月18日 17:00

スター・ウォーズのエピソード9スカイウォーカーの夜明けを観てきました。
これで本当に最後かと思うと、寂しいなと思っていましたが、観終わったときは
本当に感慨深く、寂しさを感じつつも、すがすがしさを覚えました。
(内容に関しては、もうあちこちに書かれているでしょうし、ネタバレはいっさい
したくないので、ここではふれないでおきますね。)

映画館は、名古屋では初めてのドルビー・シアターで、すっごい迫力!
思い出したのは、日本で最初にエピソード4が公開された夏のこと。

1978年。大学の夏休み。アーチェリー部の練習も休みだったその日、
いまはなき伝説の映画館、スーパーシネラマ方式のテアトル東京の、
その壮大なスクリーンが堪能できる2階席に、わたしはいました。
それはもう、冒頭からエンディングまで、圧倒的な体験でした。
「スター・ウォーズ」のような作品はそれまでまったくなかったのです。

アメリカでは前年に公開されて、大ヒットしていました。
でも、そんなことになるとはわからないジョージ・ルーカスは、
どれだけお客さんが入るか心配で、ハワイに逃げていたんですよね。
今思えば、信じられないことです。

新しい作品が公開されるのが、本当に待ち遠しかったです。
特に、エピソード5のあと、エピソード6が公開されるまで。
ハン・ソロが冷凍された状態で、3年も待たされて!
けれども、スター・ウォーズと同じ時代に生きてきたことは幸せだったなと
しみじみ感じています。

エピソード6は、当時勤めていた広告会社が20世紀FOXの宣伝担当だったので
コマーシャルのフィルムがいち早く見られたし、また、日比谷での試写会に
呼んでもらえて、ものすごく嬉しかったのを思い出します。
映画会社のロゴに続いて、ジョン・ウィリアムズの名曲のイントロがジャ〜ン!
と鳴った途端に、場内ものすごい拍手と興奮状態に。
そして、エンドロールが出たときも、万雷の拍手でした。

その後、ご存知のようにエピソード1〜3が作られ、さらに、
エピソード7〜9と続いていくのですが、
この最後の7〜9。最初に作られたシリーズの主役たちが再登場したのが
本当に嬉しくて、知ったときには飛び上がりました。同時に、年齢的に
大丈夫か心配したけど、杞憂でしたね。(大変失礼いたしましたm(_ _)m)

どのシリーズから見始めたとしても、ファンならきっと、どのキャラが好きって
ありますよね。
わたしは、断然ハン・ソロです!
(船なら、ミレニアム・ファルコン。ドロイドならR2)

ここだけの話ですが、そんなわけで(?)「ユリディケ」を最初に書いたとき、
主要登場人物のひとりは、わたしの脳内では、ハリソンで再生されていました。
(当時の若きハリソンです。)
ちょっと口は悪いけど、本当はやさしくて剣の名手。特技は、身分を隠して
世の中をうろつくこと。読んだ方なら、すぐわかりますね(*^_^*)
でも、もちろん、読者の方には、それぞれ好きなイメージを浮かべてほしいので
あくまで、わたしの脳内のお話。

で、すごくハン・ソロが好きになったことで、
当然のように、ハリソン・フォードのファンにもなりました。
その後、「ママはシングル」に登場するママを、
ハリソンのファンにしちゃったほどです。

サラファーンの星シリーズでも、こっそり(ちゃっかり?)名前を拝借。
諜報員のひとり、ハル・ソーン。
ハン・ソロとハリソンを足して2で割り、ひとひねりして、ハル・ソーン。
大胆で豪胆な性格も、ちょっと似ています。
ハルに関しては、書くことがいろいろあるので、ゆっくり紹介したいです。

とまあ、そういうわけで、「スター・ウォーズ」は、思い出の作品です。
ジョン・ウィリアムズがオーケストラを引き連れて来日したときは、
もちろん、聴きに行きましたし(実は、これも努めていた会社が関わっていて
チケットを取ることができたのですが)、
「ジェダイの帰還」の完成後、オールナイトの上映、というイベントがあり、
友達と行ったこともありましたっけ。
亡くなられた映画評論家の水野晴郎さんがゲストでしたが、
会場に行くエレベーターで偶然一緒に乗り合わせました。
水野さん、シリーズの完成を、天国で祝っているに違いありませんね。

最後に。。。
 May the Force be with you. Always,

フォードVSフェラーリ〜絶対王者に挑んだ男たち2020年01月09日 17:21


フォードVSフェラーリ
         Ⓒ 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

先日、「フォードVSフェラーリ」の試写会に行ってきました。
1960年代のル・マン。
フェラーリが絶対王者として君臨していたその24時間耐久レースに参戦した
フォードの、エンジニアとレーサーの実話です。

不可能ともいわれたその挑戦を任されたのは、マット・デイモン演じる、
心臓病によって引退を余儀なくされたレーサーのキャロル・シェルビーと、
クリスチャン・ベイル演じる、
ずば抜けた腕を持つけれど、頑固で偏屈なドライバー、ケン・マイルズ。
(頑固な偏屈者を演じさせたら、クリスチャンは、右に出る者がいません!
本当はとってもハンサムで、「バットマン」のブルース・ウェインが
ぴったりの俳優さんなのに。)

どちらもアカデミー賞俳優という、とっても贅沢な組み合わせ。
このキャスティングを聞いただけで、断然観たくなります!
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」では
ブラピとディカプリオの顔合わせが素晴らしかったけれど、
このふたりも、勝るとも劣らぬ抜群のケミストリー。
彼らが一緒の画面にいることが、奇蹟のように思えました。

冒頭、映画会社のロゴとともに、レーシングカーのエンジン音が入ってきます。
ル・マンのレース中継なんですね。
その粋な演出に、観客はさっそく1960年代のレースの世界へと誘い込まれます。

ル・マンといえば、フランス映画の「男と女」しか知らなかったのですが、
レースシーンは、ものすごい迫力でした。
特に、1966年当時のコースを忠実に再現したというル・マンのシーンは
臨場感たっぷり。
(森や田舎道がなんとも良いです。現在のコースは全然違うらしいです。)

そして、カメラはレーサーの視点でとらえているので、
ほんの一握りの優れたレーサーだけが垣間見ることのできる世界を、観客も
観ることができるのです。それこそが、映画のマジック!

カメラのよさは、それだけではありません。
宵闇迫るサーキット。マイルズが息子ピーターと語るシーンの息を呑むような黄昏。
ル・マン前夜、眠れぬマイルズがふらりと訪れる雨に濡れたサーキット。
そうした静かなシーンの美しさといったら!
これはぜひ、大画面で観てほしいです。

人間ドラマも見応えたっぷり。
心臓病のためにレースをあきらめ、カーデザイナーとなったシェルビー。
やはり天才的なレーサーなのに、性格が災いし、整備工場を営むマイルズ。
そんなふたりがタッグを組んで、
何度失敗を繰り返しても、フォード社の内部から妨害が入っても、
決してくじけず立ち向かうさまは、すがすがしいのひと言です。

そんなふたりの男の熱い友情もさることながら、
変わり者の夫マイルズを支える、やさしくて強い妻との
揺るぎない夫婦愛、
父親を敬愛する息子との親子の絆も胸を打ちます。
フェラーリの会長とマイルズが、一瞬視線を交わすシーンにも
ぐっときました。
(ネタバレになるので、どんなシーンかは観てのお楽しみ。)

「フォードVSフェラーリ」は、明日、1月10日全国公開。
わたしのようなレースを全然知らない人でも楽しめる正統派の作品です!