『モンテ・クリスト伯』とマルセイユ2026年01月25日 14:38

マルセイユを訪れたのは1989年。
『ユリディケ』のささやかな印税をぜ〜んぶはたいて、ヨーロッパを5週間回ったときです。
ロンドン往復の格安航空チケットを取り、まずはイギリスに語学留学した友だちと落ち合い
南仏やイタリアを回りました。
プロヴァンス地方をすすめられ、最初に降り立ったのがマルセイユ(だったと思う)。
スマホもパソコンもない時代。
「地球の歩き方」を手に、着いたその日に公衆電話でホテルに電話したり、直接行って
部屋を見せてもらって決めたりしました。

マルセイユの港は明るく、海は爽やかな青。空も青く、ヨットがたくさん係留されていて、
夕食は、タクシーの運転手さんに、おすすめのお店は?と聞いて(あるいはもしかしたら
宿の人に聞いてタクシーに乗った)ら、港の前のレストランに連れて行ってもらった気が
します。こちらの記憶もはなはだ怪しいですが、そのレストランと港の美しさは
はっきりと覚えています。ウエイターのお兄さんが片言英語で一生懸命メニューの説明を
してくれたことも。
友だちはマルセイユ名物のブイヤベースを、私はドーバーソール(巨大な白ビラメ)の
ムニエルを頼みました。美味しかったです。すごいボリュームだったけれど。
一番小さなのにしてね、と頼んだら、お魚を何匹か持ってきてくれて、小さいのって
これだよね、というのが、もう相当な大きさで。
陽気なお兄さんの説明で、デザートも想像しながら頼みましたが、彼の英語と私たちの
英語との誤差?により、想像と全く違ったものが出てきました。それも旅の楽しみですね。

そんな明るいマルセイユの港から海を望むと、
遠くに断崖のある小さな島が浮かんでいるのが見えます。イフ城を抱く島。
友だちと私が港をぶらぶらしていたとき、街の人が教えてくれました。
そこは、アレクサンドル・デュマの小説『モンテ・クリスト伯』で主人公が
幽閉されていた場所で、かつては要塞だったものが、牢獄になったのだと。
明るい南仏の太陽のなせるわざか、そんな暗いイメージはまったくなかったです。
調べてみたら、牢獄として使われたあと、歴史的建造物に指定され、
フェリーも出ているそうで、行ってみればよかったなぁ。私ときたら、
「地球の歩き方」よく読まなかったのだろうか。残念です。

その旅から何年かあと、別の友だちと話をしている時、彼女がいいました。
「これまで読んだ本の中で一番面白かったのが、『モンテ・クリスト伯』。
主人公が、友だちに陥れられて、無実の罪で島の監獄に投獄されてね、脱獄して
復讐するの。すごく長い話なんだけど、あんまり面白くて、何回も読んじゃった!
絶対読んでみて!」
あのマルセイユの島が出てくる物語だ、と思い出しました。
同じ作者の『三銃士』は本当に面白かったので、デュマの本が絶対に面白いとは
想像できたけど、彼女がそんなふうに興奮して話すほど面白いんだなんて。
なにしろ、彼女が進める映画は全部面白かったから、本もそうに
違いありません。
でも、何冊にも及ぶ本で、三銃士より長いと聞いて、ちょっと腰が引けました。
(自分でもその後、長い物語を書くことになるので、そんなふうにいうのは
どうかと思うのですが。)
けれど、頭の中にある「死ぬまでに読みたい本」のリストには、いつもありました。

その『モンテ・クリスト伯』がドラマになって、日本でもオンエアされるというので
楽しみにしていました。ところが、風邪でぼうっとして、すっかり頭から抜け落ちていて
気がついたらもう始まっていました。が〜ん!
でも、見逃し配信をしているとのことで、
パソコン音痴で大丈夫かと思いながらトライしたら、無事見ることができました。

そのドラマの面白いこと! マルセイユの街やイフ城もでてきて、わくわくします。
オープニングクレジットも素敵です。夜の海で、ゆらめく波や、海の中から撮られていて、
婚約者と幸せの絶頂にいた主人公が一気に不幸のどん底に突き落とされた絶望感や、
先の読めない物語の持つ不穏さ、波乱万丈な雰囲気を伝えています。
波のあいだからちらちら映るのは、モンテ・クリスト島。投獄したあと、重要な役を
果たす島で、主人公ダンテスが別人となるときの名前の由来となっています。
クレジットの最後には、島に登る太陽。これも明るい感じではなく、翳りがたっぷり。

さて。若き船乗りだったそのエドモン・ダンテスが陥れられ、無実の罪で投獄され
脱獄して復讐を果たしてゆく物語は、ハラハラドキドキで、
本日25日が、最終回です。夜7時からBS12で。夕食時なので、録画して明日以降
ゆっくり見ます。(本当は早く見たいけど、健康のため、早く寝ているので…)

調べてみたら、去年、映画も公開されていました。フランスで過去最大のヒットとか。
それも見逃してしまったけれど、まだ映画館に行く体力がないので、仕方ないです。
ただ、ドラマ版は8話まであって長いので、やっぱり、先に見るのはこっちかな。
俳優さんたちが本当にいいです。
個人的には、第二話、牢獄の隣人となった神父さん(彼、脱獄用に何年も穴を掘っていて、
海に出るつもりが、ダンテスの部屋に抜けてしまう)との物語がとても好きです。
若き隣人に、社交界のマナーから、天文学から、物理から、脱獄の知識、差し入れられる
食事からオイルランプ用の油、衣服を縫う針を作る方法まで、彼の持てる知識のすべてを
教え、脱獄へと導くのです。

大作の話とともに書くのは、少しはばかられるのですが、サラファーンの四部作で、
ジョーが投獄され、脱獄するのを思い出しました。独房に入れられるはずだったジョーは
とあることから、謎めいた老人の部屋に入れられます。
ヒーラーでもある老人は、拷問を受けて瀕死の状態だったジョーの命を救い、身体を癒やし
五感を鍛え、重要な使命を託して、脱獄させます。老人とジョーのシーンは話が次々
浮かんで長くなりすぎ、半分以上けずらなければなりませんでした。

それにしても、モンテ・クリスト伯の物語はどんなふうに終りを迎えるのでしょう。
前回第六話は、とっても切ないシーンで終わってしまったので、なにか救いがありますようにと
願っています。
「ただ、復讐は蜜の味」といわれますが、私にはそうは思えません。
復讐という暗い情念は、その人自身の心に跳ね返ってしまう気がします。だから、
絵に描いたようなハッピーエンドにはならないんでしょうね。切ないですね。

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