フォードVSフェラーリ〜絶対王者に挑んだ男たち2020年01月09日 17:21


フォードVSフェラーリ
         Ⓒ 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

先日、「フォードVSフェラーリ」の試写会に行ってきました。
1960年代のル・マン。
フェラーリが絶対王者として君臨していたその24時間耐久レースに参戦した
フォードの、エンジニアとレーサーの実話です。

不可能ともいわれたその挑戦を任されたのは、マット・デイモン演じる、
心臓病によって引退を余儀なくされたレーサーのキャロル・シェルビーと、
クリスチャン・ベイル演じる、
ずば抜けた腕を持つけれど、頑固で偏屈なドライバー、ケン・マイルズ。
(頑固な偏屈者を演じさせたら、クリスチャンは、右に出る者がいません!
本当はとってもハンサムで、「バットマン」のブルース・ウェインが
ぴったりの俳優さんなのに。)

どちらもアカデミー賞俳優という、とっても贅沢な組み合わせ。
このキャスティングを聞いただけで、断然観たくなります!
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」では
ブラピとディカプリオの顔合わせが素晴らしかったけれど、
このふたりも、勝るとも劣らぬ抜群のケミストリー。
彼らが一緒の画面にいることが、奇蹟のように思えました。

冒頭、映画会社のロゴとともに、レーシングカーのエンジン音が入ってきます。
ル・マンのレース中継なんですね。
その粋な演出に、観客はさっそく1960年代のレースの世界へと誘い込まれます。

ル・マンといえば、フランス映画の「男と女」しか知らなかったのですが、
レースシーンは、ものすごい迫力でした。
特に、1966年当時のコースを忠実に再現したというル・マンのシーンは
臨場感たっぷり。
(森や田舎道がなんとも良いです。現在のコースは全然違うらしいです。)

そして、カメラはレーサーの視点でとらえているので、
ほんの一握りの優れたレーサーだけが垣間見ることのできる世界を、観客も
観ることができるのです。それこそが、映画のマジック!

カメラのよさは、それだけではありません。
宵闇迫るサーキット。マイルズが息子ピーターと語るシーンの息を呑むような黄昏。
ル・マン前夜、眠れぬマイルズがふらりと訪れる雨に濡れたサーキット。
そうした静かなシーンの美しさといったら!
これはぜひ、大画面で観てほしいです。

人間ドラマも見応えたっぷり。
心臓病のためにレースをあきらめ、カーデザイナーとなったシェルビー。
やはり天才的なレーサーなのに、性格が災いし、整備工場を営むマイルズ。
そんなふたりがタッグを組んで、
何度失敗を繰り返しても、フォード社の内部から妨害が入っても、
決してくじけず立ち向かうさまは、すがすがしいのひと言です。

そんなふたりの男の熱い友情もさることながら、
変わり者の夫マイルズを支える、やさしくて強い妻との
揺るぎない夫婦愛、
父親を敬愛する息子との親子の絆も胸を打ちます。
フェラーリの会長とマイルズが、一瞬視線を交わすシーンにも
ぐっときました。
(ネタバレになるので、どんなシーンかは観てのお楽しみ。)

「フォードVSフェラーリ」は、明日、1月10日全国公開。
わたしのようなレースを全然知らない人でも楽しめる正統派の作品です!

ルパン三世 THE FIRST〜愛しのレティシア2020年01月07日 16:50


ルパン三世 THE FIRST ムビチケ

ルパンの物語は、小学校の時、学級文庫でわくわくしながら読んだ記憶があります。
三世じゃなくて、初代ルパン。モーリス・ルブランの原作です。

学級文庫にあったのは、子ども向けに簡単にしたものでしたけど、
神出鬼没で、変装の名人。女性や子どもにやさしい紳士で、
貴族や大富豪の宝石や美術品だけを狙う素敵な盗賊ぶりに、ほれぼれしました。
ロビン・フッドもそうですが、義賊って、子どものあこがれですよね。
(そのあこがれが、のちのち、黒のジョーというキャラクターを生みだすことに
なったのですね、きっと!)

ルパン三世は、その怪盗ルパンの孫(という設定)。
ご存じ、モンキー・パンチさんの原作で、現在公開中の
「ルパン三世 THE FIRST」は、彼の悲願だったという3DCG作品です。

去年、公開まもなく劇場で観てきたのですが
とても雰囲気のある映像で、特に、パリの風景が素敵でした。
冒頭、第二次世界大戦下のフランスから始まって、十数年後のパリから
本格的に物語が始まるのですが、特に、夜のパリが美しかったです。
20世紀なかばのパリに、タイムスリップしたようでした。
3Dのルパンは、長い指がきれいで、顔の表情も豊かで、なかなかよかったです。
(モンキー・パンチさんに見せてあげたかった!)

おなじみの面々も元気に登場。台詞のやりとりもお洒落で可笑しく、
家族で楽しめる作品に仕上がっています。
(お正月映画にぴったりなのに、紹介が遅くなってごめんなさい。)
場所や建物の説明が出るとき、文字がカシャカシャって、暗号が解読される
みたいに動くのや、発射された弾丸が、道路標識を止めたナットをくるくる回して
標識を落としてしまうところなど、遊び心がいっぱい。

今回のお宝は、宝石ではなく未知のエネルギー。
盗むのは、そのエネルギーを生みだす装置のありかを記した考古学者の日記。
登場するヒロインは、考古学者をめざす少女レティシア。
作品全体として、ちょっと「カリオストロの城」を思わせます。
レティシアは、カリオストロのクラリスをお転婆にした感じかな。

このレティシアという名前。
たぶん、わたしと同世代か、少し上で映画好きな人は、きっと、聞き覚えが
あるでしょう。
青春映画の永遠のヒロイン。
1967年のフランス映画「冒険者たち」のヒロインの名前です。
(公開以降、生まれた女の子にレティシアと名づける人が続出したそうです!)

「冒険者たち」は、海に眠る財宝を求めて冒険に出た男女三人の物語。
レティシアは、マヌーとローランのふたりから愛される新進芸術家。
マヌー演じるアラン・ドロンは「愛しのレティシア」という歌を歌っています。
フランソワ・ド・ルーベの口笛の主題曲に歌詞をつけたもので
口笛やピアノの主題歌同様、すがすがしく、そして切ない素敵な曲。
公開当時、わたしは小学生。さすがにリアルタイムでは観ていませんが、
学生時代、リバイバルで観たとき、
「愛しのレティシア」はエンディングに流れていました。
(初回公開時や、本国では、劇中には使われなかったようです。)

モンキー・パンチさんは、このレティシアを意識したのかなぁ。
ググってみたら、ルパン三世のTV放映アニメPartⅢの第38話に、
「俺を愛したレティシア」というエピソードがあって、このレティシアは
なんと、イルカでした!

モンキーさんが「冒険者たち」をお好きだったかわかりませんが、
わたしは本当に大好きで、リバイバル公開に何度も通いました。
わたしが男だったら、絶対にレティシアに恋をするなぁって思います。

レティシアという名前も、あまりに好きで、とうとう自分の作品
(サラファーンの星シリーズ)にひっそりと使いました。
でも、恐れ多くて、レティシアのままでは使えず、「レティ」として、
ジョサの生みの母の名前に。

そして、レティシアを愛したローランの名前も、同じ作品に入れました。
こちらは、ローランのまま!
この響きもとても好きです。
エリス卿暗殺事件特捜班のチーフの名前に使いました。

物語の登場人物の名前は、ふと浮かんだ名前がほとんどですが、
以前にも少し書いたように、まれにこうして、とっても好きで「拝借」する
名前もあります。(中でも、このふたつは特別!)

ともあれ、そんなわけで、ヒロインの名前もとても気になった映画でした。
あ、そうそう。忘れてはいけません。
作品中の、帽子とステッキの使われ方も、とってもお洒落。
こうしたディテールへのこだわりもよかったです。

イエスタデイ〜生きていることの愛おしさ2019年12月24日 09:48

「イエスタデイ」を観てきました。
売れないミュージシャンのジャックが、交通事故に遭って目を覚ますと、
誰もビートルズを知らない世界になっていた!という奇想天外なお話。
(驚いたジャックがネットでググると、ビートルズ=昆虫 と出てくるんです。)

夢をあきらめかけていたジャックは、一生に一度のチャンスと、飛びつきます。
誰も知らないなら、パクっちゃおう!
そこからジャックの人生はジェットコースターのように動き始め、
「イエスタデイ」を始め「レット・イット・ビー」「ゲットバック」など
数々のビートルズナンバーをヒットさせます。

ジャックの才能に惚れ込み、自分の前座を頼むミュージシャンとして、
エド・シーランが本人役で出演。
とっても自然で素敵な演技を披露しています。

けれど、ジャックは純粋に音楽が大好きなやさしい青年。
つねに後ろめたを感じ、巨大マネーと結びついた音楽業界に違和感を覚えます。
幼なじみでマネージャーだったエリーも離れてしまい……。
さて、どうする、ジャック!?

終盤近く、ビートルズファンには、至福の、そしてその幸せと同じくらい切ない
特別なシーンが用意されています。
ここに、作り手がこの作品に込めた思いが凝縮されているともいえる、
美しいシーンです。

わたしは1960年生まれ。
子ども時代、まわりにはビートルズの音楽があふれていました。
レコード(当時はCDはありません)を聴き始めたのは、解散したあとだったけど
「イエスタデイ」は特にメロディアスで大好きで、
中学一年の音楽の授業で、グループ発表の課題に選びました。わたしはピアノ
担当で、心を込めて演奏したのを覚えています。

ジョン・レノン暗殺のニュースは、衝撃でした。わたしは大学生。
その日はほとんどなにも手につきませんでした。
愛と平和を歌うミュージシャンが、主夫から再出発をした矢先に殺されて
しまうなんて…。
でも、ジョン・レノンの歌は永遠です。そして、ビートルズの歌も。

「イエスタデイ」は、ビートルズの曲のメロディの美しさ、
シンプルで心にまっすぐ入ってくる歌の力を改めて感じさせてくれる映画です。
そして、なにげない日常のかけがえのなさ、生きることの愛おしさを
伝えてくれる作品です。

I'll be back.遊び心あふれる台詞〜ターミネーターシリーズより2019年11月18日 21:52


Terminator:Dark Fate~T-800
2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

さて。昨夜に引き続き、「ターミネーター」のお話を。

今回の「ニュー・フェイト」には、シリーズならではの遊び心があるセリフが登場。

ファンを楽しませてくれます。

 

1:まずは、おなじみ、I’ll be back.

 

シュワちゃんといえば、このセリフ、というくらい、有名ですよね。

第一作で、サラを探して警察署にいったT-800が、門前払いを食らって言うセリフ。

あっというまに車に乗って戻ってきて強行突破!というシーンで登場。


第二作では、サラとジョンの味方となったT-800が、二人に言うセリフとして登場します。

 

そして、「ニュー・フェイト」では、ダニーとグレースの危機を救いにきたサラが、

I’ll be back. と言い残し、ターミネーターを(一時的にですが)仕留めに行くのです。

その姿の颯爽としていることといったら。第一作から見ていると、本当に感慨深いです。

ただ、あら、シュワちゃんは? セリフ取られちゃっていいの? と心配になりますよね。

ご心配なく。彼にも、ちゃんとアレンジバージョンが用意されています。

(あまり事前に知りたくない、というファンのために、これは最後に書きますね。)

 

2:Come with me. 

 

第一作で、未来からサラを守りに来たカイルが、サラを襲おうとしたターミネーターを

ライフルで撃ち倒し、彼女の腕をとって言うセリフ。

Come with me if you want to live. 

「死にたくなければ、一緒に来るんだ」

わけがわからず怖がっているサラに、カイルは、Come on! とうながします。


第二作では、シュワちゃんが、警察病院に収監されたサラを救いに来ていうセリフ。

ここにいたら殺されるという状況のなか、まだシュワちゃんを味方だと思っていないサラが、

倒れたまま逃げようとするところが、

第一作で、まだカイルを味方だと思わず、怖がっているところと重なります。(お洒落。)

 

そして今回は、ダニーを救いに来たグレースのセリフとして、装いも新たに登場。

Come with me or you’re dead in the next thirty seconds.

一緒に来ないと、30秒以内に死んでしまうよ、と、アレンジしてあります。

(字幕では、30秒ももたない、だったかな。ともかく、30秒という数字が、

第一作、第二作に比べて、新しいターミネーターがいかにパワーアップしたかを

表していますね!)

ここで嬉しいのが、そのあと、わけがわからずためらうダニーを、

グレースが、Come on! とうながすところ。カイルのセリフ、復活!

 

3:ditch the car

 

第一作で、カイルは、同じ車で逃げ続けると危険だからと、

途中で車を乗り捨てるシーンで登場する言い回しです。

I gotta ditch this car. 

当時、ditch とはなんだろう?と思って、辞書で調べた記憶があります。

「溝」という意味ですが、なにかを捨てる、というスラングでもあると知りました。

(恋人を捨てちゃうときなんかにも、使うらしいです。)

 

第二作で同じ言葉が出てきたかどうか、記憶にないのですが、

「ニュー・フェイト」では、サラのセリフとして登場。

ダニーとグレースとともに逃げる際に、やはり、この車を捨てないと、ということで、

We’ll need to ditch the car.

 

「ターミネーター」と「T2」を見直して、「ニュー・フェイト」ももう一度見たら、

もっといろいろ使い回しのセリフが発見できるかもしれません。

シリーズならではの楽しみ方ですね。

(わたしも、「ユリディケ」とサラファーンのシリーズで、同じセリフを使ったり

アレンジしたりして、ひとり密かに楽しんでいます。)


科学と人類という永遠のテーマを扱うこのシリーズでは、

それぞれのキャラクターが、どういう生き、どういう選択をするかが、

大きな魅力となっています。

ひとりひとりの選択が、未来を築き、未来を変える。

そうした理念も、I'll be back.の名セリフとともに、シリーズに共通して

作品の底辺を流れているのではないでしょうか。

 

最後に、I’ll be back. のセリフの「ニュー・フェイト」におけるシュワちゃんの

アレンジバージョンのことを。

(さっきも書きましたが、予備知識なしで観たい人は、読まないでくださいね。)

 

今回、彼は人間の女性と彼女の子と、家族として静かに暮らしているのですが

(職業:カーテン屋! 名前:カール!)

サラたちが現れたことで、家族に別れを告げます。そのときに言うセリフが、

I won’t be back.

泣けます!!

ジョンのために……「 ターミネーター:ニュー・フェイト」2019年11月17日 20:47

「ターミネーター」シリーズに、キャメロン監督が帰ってきました。シュワちゃんと

リンダ・ハミルトンをともなって!

terminator:Dark Fate

2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.


「ターミネーター」は思い出の作品です。

まだ広告代理店にいて「ユリディケ」の初稿を書きあげたころに、「これ面白いよ」と

会社の男性がビデオを貸してくれたのが、「ターミネーター」の第一作でした。

ヒロインの名はサラ。大好きな名前です。それに、とても素敵な女優さん。

何度倒されても立ちあがって追いかけてくるターミネーターは、ものすごく怖かったけど、

切ない時間SFのロマンスと、ヒロインを守るために未来からやってきた戦士カイルが

「ユリディケ」で書いたばかりの戦士、デュー・レインのイメージそのものだったことに、

文字通り胸を打ち抜かれ、名画座に通って何度も観ました。

(当時はロードショーのあと必ず名画座にきたので、けっこう長く映画が観られたのです。

「ブレードランナー」との豪華二本立て! どちらも大好きなので嬉しかった〜。)

 

今回の「ニュー・フェイト」は、キャメロン監督が第二作までメガホンをとった作品の

正統な続編とのふれこみでしたので、観ないわけにはいきません!

ドキドキしながら劇場に行ってきました。

なるべくネタバレしないように、新鮮なうちに、見どころをたっぷりお伝えします!

 

まず、冒頭5分で、いきなり衝撃の展開に。わたしは、なにかでうっかり読んでしまい、

事前に知っていたので、どうにか耐えましたが、かなりのダメージ。

その後は怒濤の展開で、「ターミネーター」と「T2」の要素を随所に盛り込んだ

ファンサービスたっぷりの作品に仕上がっています。

息つく暇もないので、観に行く前日は、よく眠って体力を蓄えておくのがポイントです。

 

ダダンダダンダン! というあのテーマ曲は健在ですし(これを聞くだけで血が騒ぎますね)

時をさかのぼることで起こるタイムパラドックスの切なさは、今回もおさえてあります。

(思い出すだけで、胸がきゅんとします。)

I’ll be back. という永遠の名台詞も、ふたたび(意外な形で)登場。


シナリオは、限りなく第一作に近い形で展開します。

AIが人間を害悪と考え、抹殺しようとしている未来。

ヒロインを抹殺するため、ターミネーターが現代に送り込まれ、

彼女を守るために、人間側のレジスタンスのリーダーが部下を送り込み、

壮絶な戦いを繰り広げるというストーリーラインはまったく同じ。

これが、デジャブ効果を生みだして、なんだかちょっと素敵です。

とはいえ、ひたすらターミネーター(今回のREV-9、とてつもなく強い!)が

追ってくるので、そんなノスタルジーにひたる余裕はほとんどありません。

 

第一作では、未来のリーダー、ジョン・コナーが現代に送った戦士カイルと、

サラ・コナー(のちにジョンを生む運命にあり、そのためAIの標的になる)の

恋模様が描かれますが、

今回は、戦士グレースと、守るべき女性ダニーのあいだにあるのは

信頼と友情。人と人との強い絆。それが観る者の心を揺さぶります。


カイルは、スリムなボディで、マッチョなシュワちゃんに対抗するところが、

本当に健気で、そこが作品の大きな魅力だったのですが、

今回のグレースも、強いんだけど(なにしろ未来の戦闘で、リーダーを守ろうとして

瀕死の重傷を負い、機械化されることで生をつなぎ止めた強化型の兵士)

ウルトラマンみたいに、そのスーパーパワーが短時間しか持たない。

それでも、懸命にダニーを守るところが、やっぱりとっても健気なのです。

それに、めちゃくちゃかっこいい!


Terminator:Dark Fate~Grace

2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

 

人類存亡の鍵を握るダニーも、とっても素敵なのですが、見どころは、

なんといっても、このグレースのかっこよさ(惚れます!)

そして、途中から登場するサラとT-800の緊張にあふれた関係でしょう。

ある事情から、サラは彼と対立しますが、そのあたりの描写も、うまいです。

 

サラは、最新型のターミネーターに追われ、危機に陥ったダニーとグレースを救います。

彼女が、救世主のようにさっそうと現れることができたのは、

未来からターミネーターが送り込まれるたびに、発信者不明のメールが

その正確な座標を知らせてくるからなのでした。

メールは毎回決まって、For John でしめくくられています。

今回、REV-9に立ち向かうため、三人の女性は、メールの発信元を突きとめ

そこに向かいます。

ここでおそらく、観客のほとんどが、シュワちゃんの登場を期待すると思いますが

期待を裏切らずに、ちゃんと登場。

あのトレードマークのサングラスも、憎い使い方をされています。

 

T2」で、未来を支配するAIを生みだす企業をつぶし、シュワちゃん演じる

T-800は、ジョンを守り、自己犠牲を選んで燃える溶鉱炉に沈んだはずなのに、

なぜまた同じT-800登場するのか?

映画はそういう疑問に少しずつこたえながら、ここからいよいよ加速していきます。

 

For John…「ジョンのために」とはどういう意味か。それは、観てのお楽しみ!

劇中には、このセリフのほか、おお! と思うセリフが登場します。

そのいくつかを、次回ご紹介します。では……

I’ll be back

復活の舞〜エン・カンの「ラ・ラ・ランド」2019年11月15日 21:10

フィギュアスケートのグランプリシリーズが始まっています。

先週の中国杯では、競技から離れていたエン・カンが戻ってきました。

4年前、同じ中国杯の6分間練習で羽生くんと衝突して、お互い怪我をしながら

演技した選手です。(ハン・ヤンとも言いますね。)


去年はみなくてどうしたのかなぁと思っていたら、怪我をしていたのですね。

引退も考えていたようですが、北京五輪を目指す決意をしたそうです。

 

好きなフィギュア選手は、あげればきりがないのですが、エン・カンもそのひとり。

音の取り方が独特というか、音感が優れていて、スケートにのびがあり、

音に乗せてすべるので、見ていてとても心地よいのです。

選曲も素敵で、振付もいつも洒落ていて、なかでも

「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は印象に残っています。

(ロマンチックで大人のムードたっぷりの曲。このときの振付も素敵でした。)

 

今回のフリーは、映画「ラ・ラ・ランド」のメドレーで

前よりいっそうのびやかなスケーティングを披露してくれました。

「ラ・ラ・ランド」は女優の卵とジャズピアニストの青年が主人公のミュージカル。

互いを思いながらもすれ違う男女の切ない恋模様を、歌とダンスが彩ります。

そんな映画のいくつものシーンが自然に浮かぶような、素敵な演技でした。

 

「ラ・ラ・ランド」、本田選手も踊っていましたが、そちらは、

映画の中の明るくエネルギッシュな曲を中心にアレンジされていて、

彼女の明るく華やかな魅力にぴったりでした。

映画に出てくるヒロインのイメージですよね。

ブルーの衣装も映画のヒロインと同じで、とってもキュートでした。


かたや、エン・カンのバージョンは、哀愁を帯びた曲を中心に構成され、

人生や恋の切なさを男性の視点でとらえていて、大人の雰囲気で

苦難を乗り越えて戻ってきた彼にぴったりでした。

彼の衣装も毎回、洗練されています。

今回はポケットをあつらえていて、最初ポケットに両手をつっこみながら

すべる演出も、心憎いばかりでした。

(ただ、ヒゲはないほうがいいなぁ。でも、最近の若者の好みかな。)

 

復活の舞。彼の代名詞だったダイナミックなトリプルアクセルも

パワーアップして帰ってきて、辛いこともたくさんあったでしょうけれど

引退せず戻ってきて本当によかったねと、拍手を送りました。

彼独特のスピンも健在でした。

(走るような格好をしてまわるやつです。我が家では「風見鶏」と

呼んでいます。)

 

さて。今週末はロシア杯。

中国杯でうっとりするような演技を見せてくれた宮原智子さんと

(銀メダルだったけど、わたしの中では彼女が一番でした!)

コーチ不在の影響か、本来の演技ができなかった宇野昌磨くんも登場。

(同じ名古屋人として、応援しています! フレー、フレー、昌磨!)

今回は、あのランビエールさんがついていてくれるそう。頼もしいです。

(ランビエール先生、どうぞよろしくお願いします。)

 

どの国のどの選手も転んだりせず、練習してきた成果と実力を出せますように!

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』主演二人の絶妙なケミストリー2019年11月12日 21:03


ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

世界で大ヒットした映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が、

間もなく、新たなシーンを加えた10分拡大版で帰ってきます。

11月15日(金)から28日(木)までの二週間限定上映です。

 

それにはどんなシーンが追加されるかわからないのですが、

ここで先日観た通常版の紹介を・・・。

 

舞台は1969年のハリウッド。主人公は二人の男。

ディカプリオ演じる、ちょっと落ち目のテレビ俳優リック。

黄金時代のエネルギッシュでポップなハリウッドで、

映画俳優として新たなキャリアを開こうと奮闘中。

かたや、ブラッド・ピット演じる、リックのスタントマン、クリフ。

リックが個人的に雇っていて、運転手兼雑用係。テレビのアンテナが

壊れれば、ひょいと屋根に上がって直すのもお手のもの。

 

ハリウッドの高台にあるリックの邸宅の隣に『ローズマリーの赤ちゃん』で

一躍名を馳せた新進気鋭の監督ロマン・ポランスキーと、

その新妻で女優のシャロン・テートが越してきて、物語は動きだします。

そして、観客もドキドキしはじめる仕掛けになっています。

なぜなら、この1969年の8月9日、身重だったシャロン・テートは

その新居で、友人とともに、狂信的カルト集団に惨殺されたのですから。

 

当時、わたしは9歳。シャロン・テート事件として、

日本でもセンセーショナルに報道されました。

大人にとってもそうだったでしょうが、なぜそんな残酷なことをする人がいるのか、

事件は、子どものわたしにとって、夜も眠れなくなるくらい衝撃的でした。

 

タランティーノ監督にとっても、その事件はずっと心にあったのでしょう。

この作品を見ると、それがよくわかります。

「ラスト13分。タランティーノがハリウッドの闇に奇跡を起こす」と

リーフレットにあるので、最初からちょっとネタバレという感じですが、

そこは狙ってそうしているのでしょう。

 

この作品のポイントは、クライマックスとなるその運命の日何が起こるか

ということと、その鍵を握るリックとクリフーー

ディカプリオとブラピのケミストリーの絶妙さにあります。

この二人が、なんともいい味のコンビに仕上がっていて、

どちらも肩の力の抜けた演技で楽しませてくれました。

リックが8歳の女優役の少女と話すシーンとか、

誰にでも優しいクリフが、がつんと言うべき相手には、

がつんと言う(というか、がつんと殴る)シーンとか、

それぞれのシーンも、見応えたっぷりです。

 

『大脱走』のオーディションが出てきたり、

あの『ゴッド・ファーザー』のアル・パチーノが、さすがの存在感で登場したり、

小さなお楽しみもたくさんありますが、

なんといっても、二人の男の(おしつけがましくない)友情がよかったです。

こういうバディもの、とても好きです。

クリフと愛犬ブランデーのコンビも、あなどれません。

(ブランデー、ぶさ可愛く、忠犬ぶりも半端じゃないんです。見終わったあと、

後ろの女の子が「あんな犬、ほしい〜」と叫んでいました。)

わたしも『ママはシングル』という小説で、ブランデーという名の犬を

登場させているので、なんだか嬉しくなりました。

 

そしてラスト。現実にはそうならなかったことを、わたしたちは知っているのだけど

せめて映画の中だけでも、ああ、よかったねと思えて、ちょっとほっとしたのでした。

『アド・アストラ』〜父を探す孤独な旅の果てに2019年09月19日 14:53

映画『アド・アストラ』より

    Ⓒ 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.


映画『アド・アストラ』の試写会に行ってきました。

舞台は近未来。主人公は、ブラッド・ピット演じる宇宙飛行士のロイ。

地球外知的生命の探索に向かって消息を絶った父を探すため、

遙かなる宇宙空間へと旅立つロイの、長く孤独な旅路を描いた壮大な物語です。

 

どんな任務も完璧にこなし、いかなる状況でも冷静で優秀なロイですが、

同じく宇宙飛行士だった父は、家庭を顧みることはなく、

母はそのために心を病み、ロイ自身も、深い孤独を抱えています。

 

彼は、伝説の宇宙飛行士である父が、実は生きており、

海王星で人類の脅威となる実験をしていると聞かされ、

その暴走を止めるという極秘の使命を帯びて、宇宙へ送り込まれるのですが、

父を探すミッションは、思わぬ危機の連続。

最後まで、何が起こるかわからない展開で、まるで自分が探索の旅に

出ているような錯覚にとらわれました。

 

冒頭の、国際宇宙ステーションから見る、息を呑むような地球。

月の基地や火星の基地も、宇宙の旅の途上のさまざまなトラブルも、

驚くほどリアルです。

宇宙が好きな人にとっては、もうそれだけでドキドキしっぱなしでしょう。

 

人類はどうあるべきか、科学のあり方、文明のあり方は、といったテーマを

深く追求し、父と子という個人の物語をも内包して、

台詞を最小限に抑えた静かな作品は、澄んだ水のように、心に染みます。

 

明日9月20日(金)から全国ロードショー公開。

『ゼロ・グラビティ』や『オデッセイ』も、宇宙空間での主人公の孤独が

ひしひしと感じられましたが、『アド・アストラ』は、もともと人との関係が

うまく築けないというロイのキャラクターによって、その孤独はいっそう際立ちます。

言葉を失うほどの圧倒的な映像と、暗黒の中の限りない孤独を肌で感じるには、

ぜひ、大きなスクリーンでご覧くださいね。