『盗賊と星の雫』〜黒のジョーとジョサの秘密2020年02月25日 11:50


『盗賊と星の雫』書影

第3部『盗賊と星の雫』には、
ギルデアの地下牢に囚われた盗賊ジョーが、老人ガリウスから
〈サラファーンの星〉にまつわる伝説を聞き、
世界を救う鍵となるダイヤモンドのブレスレットを彼に託され、
地下牢を脱し、危険な旅に出る……
という話が出てきますが、4部作のアウトラインを考えた当初は、
ジョーのシーンはそれほど多くなるはずではありませんでした。

もちろん、サラファーンの星のかけらのブレスレット〈星の雫〉を
ジョーが運ぶ、というプロットは、最初からありましたし、
それは物語の核を成す重要な要素ですが、ジョーのシーンは要所要所に
出てくるだけだったのです。

ところが、第1部が世に出たとき、
「短編を読むとしたら、どの登場人物の話がいいですか?」
というアンケートを、友人や知人に片っ端からしたところ
ジョーはほかをぐんと引き離し、ダントツの1位でした。
第1部では、ジョーは本当に少ししか出てきません。
なので、とても意外でした。

短編を書くのはいつになるかわからないし、それならいっそ、
この長編の中で、ジョーの出番を増やそうということになりました。
その時点ではすでに第2部はほぼ仕上がっていたので、
第3部から、ということで。
タイトルも、当初は『アイラの歌』でしたが、ジョーの出番が増えた
ことで、『盗賊と星の雫』に変更しました。

ところで、ジョーがガリウスから聞く、過去の伝説の物語は、
初稿では、いまの倍の長さがありました。
編集の小林さんは、『石と星の夜』に続いて、大幅にカットするよう
アドバイスしてきました。
伝説や過去の話があまり多いと、たしかに、間延びしてしまいます。
それはあとで別の物語にすればいいのでは?ということになり、
今回も、思い切ってたくさんカットしました。

『盗賊と星の雫』では、ジョーの物語と並行して、音楽家の道を
ひた走るジョサの物語が語られ、彼の秘密が明かされていきます。
これまで少しずつヒントを入れてきたので、読んでいて気がついた人も
いるかもしれません。
ジョサが体験する悲劇とともなって、
明るく脳天気な少年の裏の顔が見えてくるという展開です。
なにごとも、なにものも、見かけとは違う。
しばしばそう感じることがありますが
ジョサという少年には、そのことが、よくあてはまると思います。

第3部であたらに登場する、天上の声を持つ少女チェチェは、
物語を書き始めたときには、影も形もありませんでした。
彼女が初めて姿を見せたのは、第2部を書いているときで、
星降る野外歌劇場で、ジョサのフレシートに合わせて幼い少女がソロで
歌うシーンが浮かびました。
彼女が歌う『麗しのローレア』はメロディもあるので、歌声も聞こえるようでした。

ちょっとおしゃまで、ジョサのことを大好きな少女。
青灰色の澄んだ瞳。両親は楽団の音楽家。
生まれたときからみんなに愛されて育ったんだな、とわかる女の子。
そんな少女はきっと愛らしい名前だろうと思って、チェチェと名づけました。

この第3部で、人生の大きな転換期を迎えるステランとマリアのことや、
ジョーとガリウスに関しても、まだいろいろ書きたいことがあるのですが、
だんだん目が限界になってきました。
(ここ数年、パソコンを見ていると目がとてもつらくなってきます。やれやれ。)
また別の機会に…。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
このブログのタイトルは「サラファーンの○ができるまで」です。
○に入る漢字一文字はなに?

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://serafahn.asablo.jp/blog/2020/02/20/9215850/tb