岐阜新聞映画部2019年07月25日 11:28


岐阜新聞映画部7月の活動

岐阜の実家では岐阜新聞を愛読しています。地方紙って、結構面白いのですが、
岐阜新聞で特に素晴らしいのが、映画部を立ち上げていることです。
地元の映画館とタッグを組んで企画をして、年間100本の映画を厳選上映し、
毎月、監督や俳優を呼んで、講演会をしています。
そんな新聞社って、ほかにあるでしょうか?

こちらの画像は映画部がネットで公開しているページで(クリック拡大して
チェックしてみてくださいね。ほんと、すごいんです!)、
紙面には、毎月一回、豪華見開きでバーンと登場! こちらも大変な迫力。

映画をこよなく愛するスタッフが、映画好きの魂を懸けて始めたと聞きました。
「映画を映画館で観ないなんてもったいない」がキャッチフレーズ。
わたしも大の映画好き。
その熱い想い、わかります!
なにしろ、生まれて初めての記憶が、映画館の中なのです。
(わたしは三歳。観た映画は、『101匹わんちゃん大行進』)

樹木希林さんの『あん』のときには、上映会と希林さんの講演があって、
抽選に当たって(やった〜!)行きました。
割烹着姿の希林さんのお話、本当に面白かったし、心に染みました。

この記事の『ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス』のイベントも、とっても
行きたかったのですが、怪我の回復途上で3時間半はきついので、あきらめました。
すっかり治って、また観にいける日を楽しみにしています。

映画部の熱い想い&読み応えたっぷりの記事はこちらから。
 ↓↓

希林さんの思い出2019年07月27日 17:29

前回、岐阜新聞映画部の『あん』のイベントで樹木希林さんの講演会に行ったことを
書きました。
割烹着姿の希林さん、きらきらしたオーラがあって、それが会場を温かく包んでいました。

希林さんには、その30年以上前、一度お目にかかったことがあります。
広告代理店に勤め始めた一年目。
クリエイティブセンターという部署に配属され、ディレクターであった部長について、
あるCMの撮影に行ったときのことでした。

主演の希林さんの演技に関して、部長は何度もいろんなパターンを試します。
希林さんは、嫌な顔ひとつせずに何度も応じ、また、「こんなのどうかしら?」と、
自らいろんなアイデアを出されて、熱心に演じられました。
まさにプロフェッショナルなその姿に、とても感銘を受けました。

部長が「希林さん。うちの部の新入社員です」とわたしのことを紹介した際には、
二十そこそこの、使い走りのような娘に対して、
「Sさん(部長の名)にはいつもとてもお世話になっているの。どうぞよろしくね」と
こちらの目を見つめて、にこやかに会釈され、本当にびっくりしました。

あとで部長から、「希林さんは、あんなに有名なのに、いつも謙虚で、
本当に素敵な女性なんだ」といわれました。
あのときから、その姿勢は、きっと、ずっと変わらなかったのだと思います。
そのまっすぐな生き方の積み重ねが、岐阜のイベントでお会いしたときの、
全身から発せられていたオーラなのでしょう。
わたしもそんなふうに年を重ねたいと思いました。

訃報に接したときは、寂しかったけれど、亡くなってなお、多くの人に影響を
与えているのだと感じています。

『トールキン 旅のはじまり』2019年07月30日 18:13


『トールキン 旅のはじまり』トールキンとエディス
                    2019 Twentieth Century Fox Film Corporation


トールキンの若き日々を描いた『トールキン 旅のはじまり』の試写会に行ってきました。

時は第一次世界大戦のただなか。ところはフランスの激戦地ソンム。

塹壕熱に倒れたトールキンの、少年時代の回想から、映画は幕を開けます。

 

緑あふれる森で、騎士になりきって友だちと遊ぶトールキン。

幼くして父を失ったあと、母と弟とともに、イングランドの田園地帯で過ごした日々。

のどかな田園風景は、ホビットの村そのもの!

大画面で見ると、物語の世界に吸いこまれそうでした。

 

フィクションもかなり織り交ぜてありますが、母親も失い、十二歳で孤児になったこと、

言語や文学への情熱、同じ下宿の少女エディスとの恋、かけがえのない仲間との出逢い、

第一次世界大戦への従軍など、トールキンの生涯を語る上で欠かせない出来事を

繊細なタッチでつづっています。


親友のジェフリーが戦地からトールキンに送った手紙は、

昨秋オックスフォードで開かれていたトールキンの回顧展で展示されていました。

明日をも知れぬ戦場。すべての思いを込めて、生と死のはざまでつづられた走り書きに、

胸がつまりました。

トールキンの作品には、そうした友の遺志も、きっと継がれているのです。

 

『トールキン 旅のはじまり』T,C,B,S,の仲間

         2019 Twentieth Century Fox Film Corporation


ソンムの戦いで、この世の地獄を見たトールキン。

その壮絶な体験は、彼の人生にどれほどの影を落としたことでしょうか。

それでも、いえ、おそらくそれだからこそ、トールキンの作品を読むと、

世界は美しいという信念と、そうあってほしいという強い望みを感じます。


映画の中にも、美しい光景がりちりばめられています。

ことに、みずみずしい緑や、紅葉した木々の彩る映像は、樹木をこよなく愛した

トールキンの心を映しているようです。

オックスフォードのシーンで、トールキンが言語学の教授と歩く川沿いの道は、

アディソンズウォークと呼ばれ、トールキンが『ナルニア国物語』のCSルイスらと

よく歩いた散歩道。

わたしも友だちに案内されて歩きましたが、本当に素敵で、忘れがたい道です。


最愛の女性エディスが木々の中で踊るシーンも、幻想的な美しさに満ちています。

これは事実に基づいたシーンで、彼女が木々に囲まれて踊る姿に、

エルフの王女ルーシエンのインスピレーションを得たと、彼自身が後に述懐しています。

エディスも孤児でした。

孤独な子ども時代を過ごしたふたりが、お互いに長く寄り添えて、本当によかったです。

夫妻の墓石には、ルーシエンとベレン(彼女に恋をした人間)の名が刻まれています。

 

映画には、トールキン・ファンへのサービスもたっぷりつまっています。

冒頭の戦場で、トールキンを守るように従う部下の名はサム! 指輪を捨てる旅で主人公フロドに最後までついていった忠実な友サムと同じです。

また、少年時代に友だちと遊んでいて、大木のある道の下に身を隠すところは、

フロドたちが追っ手から身を隠すシーンを意識したのではないでしょうか。

エンドクレジットの背景では、ドラゴンや魔法使いなど、トールキンの物語世界が影絵となって映しだされるのも素敵です。


映画は8月30日(金)公開。公式サイトはこちらです。

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『トールキン 旅のはじまり』